大学生向け 水力編@奥只見ツアー レポート

エコ×エネ体験ツアー 水力編@奥只見学生ツアー 2022年ツアーレポート

▼ ツアーレポート

エコ×エネ体験ツアー2022 水力学生編@オンライン エネルギー・環境×SDGsを学び合う!ツアーレポート

「エコ×エネ体験ツアー2022 水力学生編@オンライン」はエコ×エネとSDGsがキーワード。
「エコ×エネ体験ツアー2022 水力学生編@オンライン」はエコ×エネとSDGsがキーワード。

地球規模のエネルギー問題、気候変動等により、問題意識を高めてSDGsを学ぶ学生が増えています。J-POWER「エコ×エネ体験ツアー水力学生編@オンライン~エネルギー・環境×SDGsを学び合う!~」(2022年8月30日・31日)は、エネルギーと自然の関係を学び、社会課題の解決に向けてディスカッションから行動化を目指すプログラムです。日本の電力を支えるJ-POWERが、社会貢献活動の一環として2007年より開催している同ツアーは、昨年に続き今年もオンラインで開催され、世界が抱える課題のために「何か行動を起こしたい」と思い立ち応募した学生が日本各地から集まりました。学生たちひとりひとりがエコ(環境)、エネ(エネルギー)とSDGsについて考え、さまざまな気付きを得て行動に踏み出すまでの2日間のようすをレポートします。

事前に参加者へ送付されたSDGsのガイドブックやオリジナルリングノート等の学習キット。
事前に参加者へ送付されたSDGsのガイドブックやオリジナルリングノート等の学習キット。

< ツアー概要 >

  • 日程:2022年8月30日(火)- 8月31日(水)
  • 参加者数:学生15人
  • 場所:オンラインにて開催

< 全参加学生のキャンプネーム >

  • りほ
  • やぎひろ
  • バラ
  • ジオナリ
  • リキッド
  • しょう
  • ゆつ
  • いおり
  • ゆいべ
  • もも
  • たなひな
  • あみ
  • みたひろ
  • たか
  • えいみー
(2日間通じての参加者のみ記載)

< スケジュール概要(1日目) >

1日目:2022年8月30日(火)
  • 10:00~10:15 スタート/はじまりの会
  • 10:15~10:30 アイスブレイク/お互いを知る時間
  • 10:30~10:50 水力発電所(御母衣)バーチャル見学
  • 10:50~11:20 御母衣ダムに携わる若手社員との交流会
  • 11:30~11:45 奥只見へ移動、奥只見とのライブ中継
  • 11:45~12:10 森の体験プログラム
  • 12:10~12:45 ドクターと学ぶ「科学の実験教室」~水力発電のしくみ~
  • 14:00~14:30 ここまでの体験の振り返り
  • 14:30~15:30 シゲさんの「J-POWERアワー」
  • 15:30~16:30 ラビットの「環境教育概論」
  • 16:30~17:30 ドクターの時間
  • 17:50~18:25 行動化へのつなぎの時間
  • 19:45~20:15 ひとり一言タイム
  • 20:15~21:30 交流会 ※自由参加
2日目:2022年8月31日(水)
  • 9:45~13:00 スタート/インフォメーション→行動化へのディスカッション(お昼休憩含む)
  • 13:00~14:15 グループセッションの発表
  • 14:25~14:50 全体の振り返り、エコ×エネ宣言
  • 14:50~15:00 おわりの会
全国各地から集まった15人の学生たちが2日間にわたって楽しく学び合いました。
全国各地から集まった15人の学生たちが2日間にわたって楽しく学び合いました。
2022年8月30日(火) 1日目
1日目 | 10:00

いよいよ2日間のツアーがはじまります!

山梨県北杜市清里で自然体験活動を通した環境教育を実践しているキープ協会の「おのの」が、明るく元気にプログラムの司会進行を務めました。
山梨県北杜市清里で自然体験活動を通した環境教育を実践しているキープ協会の「おのの」が、明るく元気にプログラムの司会進行を務めました。

エコ×エネ体験プロジェクトのリーダー、J-POWERの「シゲさん」のはじまりの挨拶では、エコ×エネ体験プロジェクトが生まれた経緯や専門性の異なるパートナーと共にプロジェクトを運営していること、このツアーの目的が紹介されました。

「このツアーでは普段は何気なく使っている電気と自然のつながりを知るとともに、SDGsをはじめとした社会課題を楽しく学び合い、行動するきっかけを得ることが目的です」(J-POWERシゲさん)
「このツアーでは普段は何気なく使っている電気と自然のつながりを知るとともに、SDGsをはじめとした社会課題を楽しく学び合い、行動するきっかけを得ることが目的です」(J-POWERシゲさん)
1日目 | 10:30

バーチャル映像で体験!御母衣ダム・発電所の見学へ

アイスブレイクなどで緊張をほぐしたあとは、岐阜県の御母衣発電所とダムのバーチャル映像見学です。御母衣ダムは岐阜県北部を水源とした富山湾に流れる庄川をせき止めて作られました。岐阜県は森林面積率が79%と高知県に次いで全国2位、冬は降雪も多く森の保水力もあるため、水力発電所に適した場所です。

御母衣ダムは国内最大級のロックフィル式ダムで、高さ131m、堤長は405m、体積は795万立方メートル。近くにロックフィルダムに適した岩石や粘土があるためコンクリートよりも経済的な工法が採用されました。
御母衣ダムは国内最大級のロックフィル式ダムで、高さ131m、堤長は405m、体積は795万立方メートル。近くにロックフィルダムに適した岩石や粘土があるためコンクリートよりも経済的な工法が採用されました。
御母衣発電所所長の佐々木氏がバーチャル映像で案内しました。
御母衣発電所所長の佐々木氏がバーチャル映像で案内しました。
ダム左岸地下にある発電機室へはインクラインという地上とを結ぶ乗り物を使って移動します。水車と回転軸で繋がった発電機は1分間に225回転という高速回転で電磁石を動かして電気を生んでいます。
ダム左岸地下にある発電機室へはインクラインという地上とを結ぶ乗り物を使って移動します。水車と回転軸で繋がった発電機は1分間に225回転という高速回転で電磁石を動かして電気を生んでいます。
「MIBOROダムサイトパーク」は、この場所にダムが作られた理由や発電設備の仕組みを学べる施設です。
「MIBOROダムサイトパーク」は、この場所にダムが作られた理由や発電設備の仕組みを学べる施設です。

東海北陸自動車道ひるがの高原サービスエリアの近くに「分水嶺(ぶんすいれい)」と呼ばれる水の流れの境界線があり、分水嶺の南側は長良川、河口付近では木曽川となって太平洋に流れ、北側は庄川となって日本海に流れ込んでいます。

分水嶺から海までの距離は長良川が約166キロメートル、庄川は約115キロメートルと南側と比べ約50キロ短くなっています。このことからもわかるように、庄川の流れは急で水の落差が必要な水力発電に適しています。
分水嶺から海までの距離は長良川が約166キロメートル、庄川は約115キロメートルと南側と比べ約50キロ短くなっています。このことからもわかるように、庄川の流れは急で水の落差が必要な水力発電に適しています。

御母衣ダムの中心部は遮水壁と呼ばれる粘土で水が漏れるのを防止しています。その上には小さな岩石、表面部には大きな岩石が使われ、遮水壁の粘土が流れ出るのを防ぐ仕組みとなっています。

ダム湖の水は取水口から水圧鉄管を通って落下、水車を回して発電します。水の位置エネルギーが電気エネルギーに変換されるため、電気の出力は主に水の量と落差によって決まります。御母衣発電所は最大21万5,000キロワットの出力で発電できます。
ダム湖の水は取水口から水圧鉄管を通って落下、水車を回して発電します。水の位置エネルギーが電気エネルギーに変換されるため、電気の出力は主に水の量と落差によって決まります。御母衣発電所は最大21万5,000キロワットの出力で発電できます。

御母衣ダムのある場所には、かつて荘川村中野地区、合掌造りの集落と穀倉地帯が広がっていました。電源開発の高碕初代総裁が水没する樹齢400年の立派な桜の木を見て移植を指示。その2本の桜は荘川桜と呼ばれ、住民の心の故郷にもなっています。

この御母衣ダム・発電所は、J-POWERの理念のひとつである「地域との共生」の原点で、今も地元の小中学生とともに老いた桜の養生などの活動を行っています。
この御母衣ダム・発電所は、J-POWERの理念のひとつである「地域との共生」の原点で、今も地元の小中学生とともに老いた桜の養生などの活動を行っています。

ここでJ-POWERグループの元社員で工学博士(九州工業大学)である「ドクター」による発電のしくみを知る実験がありました。

「しゃかしゃかライト」にはコイルと磁石があり、横に振ってコイルの中の磁石を動かすと電気が起こってライトが点灯します。
「しゃかしゃかライト」にはコイルと磁石があり、横に振ってコイルの中の磁石を動かすと電気が起こってライトが点灯します。
しゃかしゃかライトのような横運動は効率が悪いため、手回し発電機でLEDを点灯します。
しゃかしゃかライトのような横運動は効率が悪いため、手回し発電機でLEDを点灯します。
磁石にはN極とS極があり、極を行き来するとプラスとマイナスが変わって点いたり消えたりします。早く回すと光は目に残像として残るため、光り続けているように見えます。
磁石にはN極とS極があり、極を行き来するとプラスとマイナスが変わって点いたり消えたりします。早く回すと光は目に残像として残るため、光り続けているように見えます。

交流電気の基本を学んだ後は、馴染み深いフレミングの法則が紹介されました。左手はモーターの法則、右手は発電の法則で、どちらの手も中指は電流、人差し指は磁界、親指は力を示しています。続けてドクターのラップに合わせてわかりやすく法則をダンスで覚えました。「おのの」からは電気の速さは1秒間で地球を7回半も回る光と同じで、電気は貯められない。今、使っているこの瞬間の電気は、今、この瞬間に作られている。電気を作って届けてくれる人がいて私たちは電気を使えると解説が加えられました。

1日目 | 10:50

J-POWER社員の生の声!御母衣ダムに携わる若手社員との交流会

続いてはJ-POWERの若手社員、御母衣電力所の尾﨑巧さんと中部支店の木村渓子さんの2名とリモートで交流する時間です。尾﨑さんは技術系(土木職)として6年前J-POWERに入社。入社後すぐに北海道に赴任し、2年前の4月に中部支店管内の御母衣電力所に配属されました。入社のきっかけは、富山に遊びに行った際にその道中で初めて御母衣ダムを見たこと。J-POWERを知り興味をもち、その後インターンで御母衣電力所に。その時に食べたエビフライがおいしくて入社を決意したといいます。今のやりがいは労働後の給与明細とお子さんの寝顔を見ることと話しました。

木村さんは事務系として入社して2年目。現在、中部支店業務グループで経理業務を担当し、御母衣電力所を含む中部支店管内の予算や固定資産の管理に従事しています。入社のきっかけは、生活の基盤を支えられること、事業規模が大きく多様な業務に携われて事務系でも挑戦できる環境、積極的に海外事業を展開していること。経理面から技術職をサポートする毎日には新しい発見があり、規模の大きな仕事もあるのでやりがいを感じていると話してくれました。

学生からお二人への質問タイム。学生時代に何を学んだかとの問いに、尾﨑さんは高等専門学校で土木系、木村さんは大学でタイ語を学んだと回答。木村さんがJ-POWERに入社を決意した理由のひとつにタイに発電所があることもあげられるとのことでした。また御母衣ダムの耐用年数に関する質問に対しては、尾﨑さんは建設から60年以上経つ御母衣ダムでは10年といった長期計画で修繕を進め、どう修繕するかを自分たちで考えながら取り組んでいると話しました。木村さんは技術職の方たちとのやり取りから、専門知識の豊富さや仕事への誇りを感じたというエピソードも教えてくれました。

御母衣発電所の尾﨑さんとJ-POWER中部支店の木村さんが学生たちと交流しました。
御母衣発電所の尾﨑さんとJ-POWER中部支店の木村さんが学生たちと交流しました。

最後は学生へのメッセージ。「今はコロナ禍で自粛、自粛の日々だと思いますが、学生時代はいろいろな友達と遊びに行って、いろいろなものを見ることがとても大事だと思います。できる限り遊んでください」(尾﨑さん)。「社会人は大変そうだと思うかもしれませんが、入社してみると仕事は毎日楽しいです。そこは心配せず社会人生活に期待を膨らませて頑張ってほしいと思います」(木村さん)。

1日目 | 11:30

奥只見からのライブ中継

次は奥只見ダム・発電所へ。東京から新幹線で1時間半の新潟県南魚沼市にあるJR浦佐駅から車で向かいます。奥只見は山の奥にあり、道中も雪国ならではの工夫が見られます。信号機は雪が積もって車に落下する危険性から、横ではなく縦並びとなっています。また道路には消雪パイプ、家屋や建物の土台や玄関は雪に埋まらない高い位置にあります。

奥只見に向かうシルバーラインと呼ばれる道路は、奥只見ダムと発電所の建設工事に使うための材料や機材等を運ぶために作られました。
奥只見に向かうシルバーラインと呼ばれる道路は、奥只見ダムと発電所の建設工事に使うための材料や機材等を運ぶために作られました。

奥只見観光の佐藤氏が現地からライブ中継。奥只見ダムはコンクリートの重力式のダムで長さが480m、高さは157mとビルの40階ほどの高さです。地下の発電所で作られた電気は都心まで送られています。

「四季折々の自然が楽しめて、魚沼産コシヒカリや山菜、おいしいお酒もあります。皆さんぜひ一度、遊びに来てください。お待ちしています」(佐藤氏)。
「四季折々の自然が楽しめて、魚沼産コシヒカリや山菜、おいしいお酒もあります。皆さんぜひ一度、遊びに来てください。お待ちしています」(佐藤氏)。
奥只見ダムの雪景色。雪も水源となっています。ダム湖の奥只見湖は遊覧船もあり、夏休みや紅葉シーズン、冬はスキーやスノーボードで賑わい、年間4万人の観光客が訪れています。
奥只見ダムの雪景色。雪も水源となっています。ダム湖の奥只見湖は遊覧船もあり、夏休みや紅葉シーズン、冬はスキーやスノーボードで賑わい、年間4万人の観光客が訪れています。
1日目 | 11:45

森の体験プログラム~気持ちの良いブナの森で豊かな自然を知る

奥只見湖の遊覧船で行くことができる銀山平の森の案内は、キープ協会の「ぱりんこ」が務めました。

森の中は少しひんやり、葉もとても柔らかく、形もいろいろです。森の中には生き物たちの住処、ネズミの穴やキツツキの巣もあります。
森の中は少しひんやり、葉もとても柔らかく、形もいろいろです。森の中には生き物たちの住処、ネズミの穴やキツツキの巣もあります。

「葉っぱっぱじゃんけん」へ。学生たちは事前に葉を3枚ほど近所で探して用意。キープ協会のスタッフがお題を出し、葉の特徴をお互いが比べました。

もっとも長い葉、ギザギザが多い葉、茎が長い葉、見た目が強そうな葉などを競い合い、学生たちは「葉っぱじゃんけん」を通して、葉を自分の目でよく観察し、自然に触れることを楽しみました。
もっとも長い葉、ギザギザが多い葉、茎が長い葉、見た目が強そうな葉などを競い合い、学生たちは「葉っぱじゃんけん」を通して、葉を自分の目でよく観察し、自然に触れることを楽しみました。

森へ戻り、白い木肌が特徴のブナの森へ。ブナの木は冷たく気持ちが良いといいます。葉を触るとすべすべしており、真ん中が少しくぼんだお椀型で雨を受け止めるのに良い形です。ブナの実は栄養があり森の生き物の大事な食料となっています。

銀山平の森の地面には落ち葉もたくさんあり、めくるほど葉は細かくなって元の形はわからなくなります。また、もっとも下の土は少し湿っています。この土はミミズや小さな生き物たちが落ち葉を食べて細かくしたものです。
銀山平の森の地面には落ち葉もたくさんあり、めくるほど葉は細かくなって元の形はわからなくなります。また、もっとも下の土は少し湿っています。この土はミミズや小さな生き物たちが落ち葉を食べて細かくしたものです。
1日目 | 12:10

「ドクターと水力発電のしくみを学ぶ「科学の実験教室」

続いてこの豊かな森と水力発電がつながる原理をドクターの実験で解き明かしていきました。

森にある木や植物が成長するためには「土」が重要です。豊かな森の土と植物が生えにくいグラウンドの土を比較します。グラウンドの土に性質が似ている、セルロースという小さな粒の集合体であるキッチンペーパーを利用しました。
森にある木や植物が成長するためには「土」が重要です。豊かな森の土と植物が生えにくいグラウンドの土を比較します。グラウンドの土に性質が似ている、セルロースという小さな粒の集合体であるキッチンペーパーを利用しました。

森に見立てた箱にグラウンドの土や落ち葉、ミミズ、ムカデ、微生物、きのこ、トビムシなどの生き物、水を入れました。それらの働きでグラウンドの土は丸い形の森の土(団粒)に変化します。別々のペットボトルで作った透水試験装置に、森の土とグラウンドの土を同じ量だけセッティングし、それぞれに雨に見立てた水を入れて、水の染み込む速度を確かめました。

右の丸くなった森の土はスムーズに水が染み込みますが、グラウンドの土は染み込む速度が遅いことがわかります。
右の丸くなった森の土はスムーズに水が染み込みますが、グラウンドの土は染み込む速度が遅いことがわかります。
ストローで息を吹き込むと、森の土は空気の通りが良く、グラウンドの土は通りが悪いこともわかりました。空気の通りやすさは植物の成長に重要で、グラウンドの土のように不必要な水が残ると植物は根腐れしますが、森の土は植物が成長するための適量な水を保持しています。
ストローで息を吹き込むと、森の土は空気の通りが良く、グラウンドの土は通りが悪いこともわかりました。空気の通りやすさは植物の成長に重要で、グラウンドの土のように不必要な水が残ると植物は根腐れしますが、森の土は植物が成長するための適量な水を保持しています。
透水試験装置をつなげて1つの山に見立てました。そこに雨を降らせると、水は染み込んで下方にゆっくりと1つの流れとなって地下水に。地下水は飲料水や農業用水、そして水力発電にも利用されています。
透水試験装置をつなげて1つの山に見立てました。そこに雨を降らせると、水は染み込んで下方にゆっくりと1つの流れとなって地下水に。地下水は飲料水や農業用水、そして水力発電にも利用されています。
水力発電用のダムに見立てた発電実験では、水車に水を落とし、コイルの中の磁石を回転させて電気を起こしLEDを光らせました。
水力発電用のダムに見立てた発電実験では、水車に水を落とし、コイルの中の磁石を回転させて電気を起こしLEDを光らせました。

水力発電の弱点は、電気が必要な時にはすぐに起こせますが、水がなくなると電気を起こせないことです。奥只見ダムは水力発電では日本最大規模の56万キロワットの発電能力がありますが、それは一般的な火力発電のおよそ半分です。満杯の水をどんどん使ってフルパワーで発電すれば、およそ2週間程度しかもたないので、水をためながら必要な時に発電することが重要です。

森が成立するには、いろいろな生き物や落ち葉、水が必要で、土にいる生き物が落ち葉などと作用しながら、硬い土がフカフカの土に変わります。それが水を蓄えて地下水となり流れてダムにたまります。森は自然の力で作られる森のダムであり、水力発電のダムは人間の力による人工のダムといえます。
森が成立するには、いろいろな生き物や落ち葉、水が必要で、土にいる生き物が落ち葉などと作用しながら、硬い土がフカフカの土に変わります。それが水を蓄えて地下水となり流れてダムにたまります。森は自然の力で作られる森のダムであり、水力発電のダムは人間の力による人工のダムといえます。
1日目 | 14:30

事例からエネルギーと環境の共生を知る。シゲさんの「J-POWERアワー」

次はJ-POWERが取り組む4つの事例をシゲさんが紹介しました。SDGsの17の目標のうち「7.エネルギーをみんなに そしてクリーンに」「11.住み続けられるまちづくりを」「13.気候変動に具体的な対策を」の3つに関わる事例は、戦後復興・高度成長で急増した電力需要に応えてきたJ-POWERの社史をかたどる記録でもあります。

最初の事例は、バーチャル映像で体験した御母衣ダム・発電所の開発です。1952年に建設公示された後、白川郷の上流にあった2百数十戸、1,200人余りの集落の移転をめぐり、ダム建設に反対する人々との合意を経て、発電所運転にいたるまでの歴史が語られました。
最初の事例は、バーチャル映像で体験した御母衣ダム・発電所の開発です。1952年に建設公示された後、白川郷の上流にあった2百数十戸、1,200人余りの集落の移転をめぐり、ダム建設に反対する人々との合意を経て、発電所運転にいたるまでの歴史が語られました。
2つめはライブ中継でつながった奥只見の環境保全に関する事例です。奥只見発電所の増設で課題となった絶滅危惧種・希少種の保護・保全のために、J-POWERの鳥羽瀬孝臣氏が湿地の復元を提案。専門家らの協力を得て「環境」を新たにつくり、電源開発とともに生物多様性の保全にも努めました。
2つめはライブ中継でつながった奥只見の環境保全に関する事例です。奥只見発電所の増設で課題となった絶滅危惧種・希少種の保護・保全のために、J-POWERの鳥羽瀬孝臣氏が湿地の復元を提案。専門家らの協力を得て「環境」を新たにつくり、電源開発とともに生物多様性の保全にも努めました。
3つめはエコ×エネ体験ツアーの火力編の舞台の磯子火力発電所の事例です。国内炭の労働問題も背景に、事業者と自治体が日本で初めて公害防止協定を結びました。
3つめはエコ×エネ体験ツアーの火力編の舞台の磯子火力発電所の事例です。国内炭の労働問題も背景に、事業者と自治体が日本で初めて公害防止協定を結びました。
4つめの事例は、大崎クールジェンの実証試験です。脱炭素を目指し、CO<sub>2</sub>分離回収や石炭ガス化複合発電等に取り組んでいます。
4つめの事例は、大崎クールジェンの実証試験です。脱炭素を目指し、CO2分離回収や石炭ガス化複合発電等に取り組んでいます。

シゲさんは電源地域の人たちと電力消費地の人は違う人であることに留意すること、すべてを満足させる完璧な発電方法はないため上手く組み合わせることが重要であるとしました。またSDGsの17の目標にも触れ、エネルギーとさまざまな社会課題がつながっていることにも言及し講義を締めくくりました。

エネルギーとSDGsは密接に関連しています。
エネルギーとSDGsは密接に関連しています。
解のない時代に対応するために大切な要素が紹介されました。
解のない時代に対応するために大切な要素が紹介されました。
1日目 | 15:30

ラビットの「環境教育概論」…環境教育は“関係教育”

続いては山梨県北杜市清里のキープ協会で自然と関わる仕事に携わる「ラビット」の「環境教育概論」です。

まず学生たちに好きな自然の風景を描いてもらい、各自が残したい自然環境に思いを馳せました。
まず学生たちに好きな自然の風景を描いてもらい、各自が残したい自然環境に思いを馳せました。
ラビットは環境問題を解決する3つの方法として「ルールを作る」「イノベーション(技術革新)」「環境教育」をあげ、環境教育はベースとなるものとしました。
ラビットは環境問題を解決する3つの方法として「ルールを作る」「イノベーション(技術革新)」「環境教育」をあげ、環境教育はベースとなるものとしました。
環境やエコという言葉の定義は扱う範囲も広く、問題解決のアプローチも多岐にわたります。ラビットは環境教育を「関係教育」と言い換えて今、社会で起きているさまざまな歪みや問題は、それぞれの関係が断ち切られている状態ではないかと話しました。その断裂した関係をつなげる働きかけや自然に触れ合う機会につなげる役割が、環境教育ではないかと語りました。
環境やエコという言葉の定義は扱う範囲も広く、問題解決のアプローチも多岐にわたります。ラビットは環境教育を「関係教育」と言い換えて今、社会で起きているさまざまな歪みや問題は、それぞれの関係が断ち切られている状態ではないかと話しました。その断裂した関係をつなげる働きかけや自然に触れ合う機会につなげる役割が、環境教育ではないかと語りました。

またラビットはSDGsを良い合言葉と評価しながらも、もっとも恐れるべきは「無関心」だと指摘しました。そして「無関心」を抑止するには、子供たちだけでなく全世代に「感受性・想像力・複眼的思考」を養うことが重要であると説きました。

またSDGsは関心がある目標を絞ることではなく、それぞれの目標が密接に関係しあい、まだ知らない課題があることに気づかせてくれるツールだとしました。
またSDGsは関心がある目標を絞ることではなく、それぞれの目標が密接に関係しあい、まだ知らない課題があることに気づかせてくれるツールだとしました。
行動化に向けては、まず「エコ×エネ」×「自分」と考え、さまざまな視点をもつ複眼的思考が大事であると話し、SDGsはニーズの宝庫であること、自分の専攻を深めると同時にいろんな分野を渡り合う、領域の間に立ってつなげる“インターフェイス(橋渡し役)”の役割の必要性も説明されました。
行動化に向けては、まず「エコ×エネ」×「自分」と考え、さまざまな視点をもつ複眼的思考が大事であると話し、SDGsはニーズの宝庫であること、自分の専攻を深めると同時にいろんな分野を渡り合う、領域の間に立ってつなげる“インターフェイス(橋渡し役)”の役割の必要性も説明されました。
1日目 | 16:30

ドクターの体験から行動化への道筋を知る

行動化への具体的なアプローチとして、ドクターが自身の体験を事例として紹介しました。

ドクターの活動フィールドである開発途上国の廃棄物管理改善から、インドネシアのスラバヤでのあふれるゴミや、教育機会がないウェイストピッカーとして暮らす子供のようすが映像で流されました。
ドクターの活動フィールドである開発途上国の廃棄物管理改善から、インドネシアのスラバヤでのあふれるゴミや、教育機会がないウェイストピッカーとして暮らす子供のようすが映像で流されました。
こうしたゴミ問題、公害問題は1960年代の日本にもありました。埋立処分場から焼却に至ったが、大気汚染、特にダイオキシンによる健康被害が発生。焼却技術を高めて乗り越えましたが、ドクター自身もそうした時代の中で、環境に関する研究や知見を培いました。そこで開発途上国の海外技術協力に踏み出します。
こうしたゴミ問題、公害問題は1960年代の日本にもありました。埋立処分場から焼却に至ったが、大気汚染、特にダイオキシンによる健康被害が発生。焼却技術を高めて乗り越えましたが、ドクター自身もそうした時代の中で、環境に関する研究や知見を培いました。そこで開発途上国の海外技術協力に踏み出します。
インドネシアのスラバヤ市では、生ゴミを堆肥にするコンポスト技術でゴミがあふれていた地域の環境を改善。家庭の生ゴミにも取り組んで緑豊かな町並みが出現しました。
インドネシアのスラバヤ市では、生ゴミを堆肥にするコンポスト技術でゴミがあふれていた地域の環境を改善。家庭の生ゴミにも取り組んで緑豊かな町並みが出現しました。
「高倉式コンポスト(Takakura Composting Method)」と名付けてプロモーションを展開し、ドクター自身がコミュニティの中に入って現地の人を巻き込んだといいます。ドクターはこれまでに50か国以上に対して技術指導を行い、実際に足を運んで指導したのは13か国にのぼります。社会変革には、実際にコミュニティの中に入ることも大事だとドクターは語りました。
「高倉式コンポスト(Takakura Composting Method)」と名付けてプロモーションを展開し、ドクター自身がコミュニティの中に入って現地の人を巻き込んだといいます。ドクターはこれまでに50か国以上に対して技術指導を行い、実際に足を運んで指導したのは13か国にのぼります。社会変革には、実際にコミュニティの中に入ることも大事だとドクターは語りました。

ドクターから学生には、大学は自らが探求力と創造力を磨く場であるが、与えられたことを待つだけになってはいないかという投げかけがありました。そしてキャリアを形成するには、専門知識を得ながら、いろいろな知見も獲得していき、専門性の近いところを埋めていくといった考え方が紹介されました。

また偶然をとらえて幸福に変える力「セレンディピティ」とは特別な人だけに現れるのではなく、それをつかまえる準備をしているかどうかにあると伝えました。
また偶然をとらえて幸福に変える力「セレンディピティ」とは特別な人だけに現れるのではなく、それをつかまえる準備をしているかどうかにあると伝えました。
そして技術だけではなく仕組みも含めた社会変革を起こすイノベーションを学生に求め、SDGsにはビジネスチャンスが潜んでいるが、一方で地球を考えればビジネス優先ではなく純粋に取り組む姿勢も必要ではないかと語りました。最後にドクターは「知識は実行してこそ価値がある。ただし知識は行動の基盤であることを認識しておかなければならない」という言葉で行動化の重要性を説きました。
そして技術だけではなく仕組みも含めた社会変革を起こすイノベーションを学生に求め、SDGsにはビジネスチャンスが潜んでいるが、一方で地球を考えればビジネス優先ではなく純粋に取り組む姿勢も必要ではないかと語りました。最後にドクターは「知識は実行してこそ価値がある。ただし知識は行動の基盤であることを認識しておかなければならない」という言葉で行動化の重要性を説きました。
1日目 | 17:50

行動化へのつなぎの時間/ひとり一言タイム/交流会

3人の専門家からのレクチャーのあとは、行動化に向けてまずは「持続可能な社会」を自分の言葉で「●●社会」に言い換えました。その学生の言葉からスタッフが翌日のディスカッションでグループに分かれるためのキーワードを作っていきます。その後の「ひとり一言タイム」では学生が自己紹介して1日目は終了しました。日程終了後も交流会が開催され、スタッフと学生、学生同士の対話は続きました。

1日目の終わりに3人の学生に
話を聞きました!

「自分の研究で世界が変わるという気持ちで勉学に励みたい」りほさん

幼いころは図書館で図鑑やいろんな本を読むのが好きでしたが、なぜか高校で国語が嫌いになり受験では理系を選びました。研究室の先輩が以前、エコ×エネ体験ツアーに参加して、とても良いと勧められて参加しました。今日はシゲさんの4つの事例に感動しました。科学者は技術的なことを周りの人に理解してもらい、当事者や住民の方のことを考えて自然を守りながら開発を進めることが大切だとわかりました。今後は卒論をしっかりとまとめて、自分の研究で世界が変わるという明るい気持ちで勉学に励みたいと思います。

りほさん
りほさん

「これまで学んだことを修士論文に集約したい」たかさん

環境分野はこれから必要と考えて廃棄物工学に進み、大学院では建築廃材の木質バイオマス発電の燃焼炉の研究をしています。2年前もエコ×エネ体験ツアー火力編に参加し、「エネルギー大臣になろう!」(火力編でプレイしたカードゲーム)を大学で開催させてもらいました。水力編にはエネルギーをもっと知りたいと考えて参加しました。今日はドクターから専門性の広げ方の話を聞き、これまでいろいろとやってきて良かったと思えました。またSDGsではいろいろな目標同士が関わり合っていると知れて良かったです。これからは今まで学んできたことを修士論文で集約できたらと思います。

たかさん
たかさん

「科学コミュニケーターを目指したい」えいみーさん」

東日本大震災で地震に、また防災館で土砂災害やダム、水に興味をもち、今は地球科学を学んでいます。今回は友人の紹介でツアーに参加しましたが、大学の次世代社会研究センターでカーボンニュートラルを広める活動をしているので電力の知識が欲しいと思いました。水力発電の実験では、仕組みや自然とエネルギーのかかわりが一連の流れで理解できました。また言葉が通じなくても熱意をもって伝えることが大事だとわかりました。これからは自分が発信源になれるよう科学コミュニケーターを目指したいと思います。

えいみーさん
えいみーさん
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