荘川桜を守る者

これからも桜に込められたたくさんの思いを守り続けたい

荘川桜を守ることの意味、その使命感を、どのように感じられていますか。そして最後に、これから荘川桜を見に訪れる全国のみなさんへメッセージを。

荘川桜を守ることは、我が社の初代総裁・髙碕氏の『自然をいつくしむ』という発想を受け継ぐことにもつながります。そして今、我が社が大切にしている『環境との調和』、そして『地域の信頼に生きる』という精神を具現化し、象徴しているのが、この2本の桜だと思っています。移植した戦後まもなくの時代は、自然を守ることに大金や労力を費やす時代ではありませんでした。しかしそんな折に、水没してしまう町で見かけた桜をなんとか残せないものかと、桜の移植に奔走し、一生懸命に自然を守った人たちがいた。それをそのまま40年以上経っても保守管理ができているということに、大きな意味を感じます。

御母衣ダムが造られた当時は、『東洋一のロックフィルダム』として有名でしたが、今では『あの荘川桜がある御母衣ダム』だと、桜の認知度の方が高いぐらいです。

所員の中には地元白川出身の者もおります。故郷の宝である荘川桜を、御母衣発電所のメンバーの手で守っていけることに、大きなやりがいを感じています。荘川桜を保守管理していくというのは、ダムの設備を保守管理していくのと同じくらい、大切にしていかなければならないという気持ちが、全所員のなかに浸透しています。まして、発電設備は旧くなれば新しいものに取り替えることも可能です。しかし、荘川桜はそうはいきませんから。

2本の桜は、ダムの底に水没した家屋に暮らしていらっしゃった住民のみなさんにとって、故郷を思い出すシンボルでした。移植当時髙碕氏は、水没してしまう村の住民のためだけに、桜を救おうと思い立たれたようですが、しかし現在では、この荘川桜の物語を知る全国のみなさんのための桜でもあるのです。開花時期はもちろんですが、一年中、桜は全国のみなさんに自然の尊さや、美しさを伝えようと、この地で息づいています。ぜひ一度、間近でご覧になっていただければ幸いです。