荘川桜二世について
それは、不可能とも呼ばれたプロジェクト
1960年(昭和35年)11月15日、岐阜県荘川村(現・高山市荘川町)で、世界でも前例のない大規模な樹木の移植(高低差50メートル、移動距離600メートル)が開始されました。電源開発(J-POWER)御母衣ダム・発電所の建設により村の一部が水没する際、村内の寺の境内にあって人々に親しまれていた樹齢400年以上にもなる2本の桜をダム湖を見下ろす高台に移植しようという試みです。
荘川桜の誕生
移植のきっかけは、ダム建設の際に当時の電源開発(J-POWER)初代総裁だった高碕達之助が発した一言。村民による建設反対運動の解散式に招かれた高碕達之助は、湖底に沈む村の様子を視察中に一本の老桜に目を留め、「この桜を水没から助けたい」と語ったのでした。当時の技術ではまず不可能であろうといわれた移植プロジェクトも無事成功し、二本の桜は無事に根付き、1962年(昭和37年)に当時の藤井崇治総裁により「荘川桜」と命名されました。
二世桜を100ヵ所以上に植樹、900ヵ所以上の教材配布
高碕達之助が残した魂は後世にも引き継がれています。電源開発(J-POWER)は創立50周年を記念して、2002年(平成14年)度から5年間をかけて荘川桜の実生の実から育てた苗木を小学校・中学校を中心に100ヵ所以上で贈呈により植樹を行いました。荘川桜を題材にした小学生・中学生用教材に至っては、900ヵ所以上で配布しており、子供たちの自然環境を大切にするこころを育もうと試みたのです。
荘川桜二世植樹活動の実施
電源開発(J-POWER)創立50周年を機として、2002年度以降、荘川桜二世植樹プロジェクトを実施しました。
桜の植樹では、元国鉄バス「名金線」の名車掌でもあり、1977年(昭和52年)に「太平洋と日本海を桜でつなごう」というスローガンで名金(名古屋~金沢)線沿いに30万本の桜を植えることを目指した佐藤良二氏(1929~1977)が有名です。電源開発(J-POWER)も2002年度以降、5年間にわたり、全国の小学校・中学校を中心に100ヵ所で、荘川桜の苗木の植樹を目指しました。
この活動の趣旨は、高碕達之助が残した魂である「人間の営みをしていく上で開発は必要であるが、できる限り自然環境に配慮し、大切にする精神」を荘川桜を通じて子供たちのこころの中に育もうとしたのです。具体的な内容は、荘川桜の種を実際に拾い発芽させた実生を1メートル程度の苗木まで育てポットに入れた上で、荘川桜のいわれを綴った銘板とともに寄贈するという活動であり、荘川桜の苗木が育っている所には、銘板が一本立てられており、荘川桜の説明がされています。
植樹先(寄贈先)には、原則として電源開発(J-POWER)とかかわりのある自治体から学校などの施設を選定することとし、電源開発(J-POWER)の各機関が窓口となって各々の地域において声掛けをしてきたのです。こうして、2002年度以降、5年間にわたって順次二世の植樹を実施、そして、2006年(平成18年)12月17日、兵庫県宝塚市にある雲雀丘山手公園での植樹をもって、とうとう当初からの目標だった「百カ所植樹」を達成したのでした。
100ヵ所目の植樹先が偶然にも高碕達之助がかつて構えていた屋敷の近くであったことは何か深い縁を感じ、こころの底からわき出る喜びを感じ、感極まるものがありました。
結果的に2007年(平成19年)3月末までに118ヵ所での植樹を達成しましたが、表1の通り、近畿や中部、四国に集中しています。当社水力発電所が10地点もある北海道でなぜ実績がないか、九州では4ヵ所しかなく、当社石炭火力発電所や海水揚水発電所が稼働している沖縄県でなぜ全く実績がないかと思われるかもしれませんが、荘川桜はヤマザクラ種のアズマヒガンザクラであり、植樹時期は落葉時の11~3月というのが最もふさわしく、同時期において余りにも降雪が著しい地域や、気候的に余りにも暑すぎる地域は、植樹後の成長がうまくいかないといわれているためです。そのようなこともあり、他の地域に比べれば比較的気候条件の制約を受けない近畿や四国、中部地区の愛知県などに集中することとなりました(三地域だけで、全体の80%以上、97ヵ所に達しています)。
表1 2002~2006年度の期間の荘川桜苗木植樹数
地域名 | 植樹個所数 | 内訳 |
---|---|---|
北信越 | 2 | 新潟2 |
関東 | 8 | 神奈川4、埼玉3、栃木1 |
中部 | 20 | 愛知17、岐阜1、三重2 |
近畿 | 54 | 和歌山20、奈良18、兵庫14、京都1、大阪1 |
中国 | 7 | 広島6、岡山1 |
四国 | 23 | 徳島10、高知7、愛媛6 |
九州 | 4 | 熊本2、長崎1、大分1 |
植樹先のリストについては表2の通りです。小学校の47ヵ所を筆頭に、中学校32ヵ所、幼稚園6ヵ所と続いています。もともと、電源開発(J-POWER)の発電所がある地域において積極的に植樹していこうと決めたのでしたが、計画が始まると、さまざまな施設に口コミで伝わっていったのでした。
社会福祉施設や公民館、公園などでの植樹のみならず、神社での植樹、学校関係では高校での植樹も実施しました。社会福祉施設の中には、当社が創立40周年(1992年)をきっかけに地域への謝意を込めて実施したクラシックコンサート(略称「J-POEWRふれあいコンサート」)開催先も含まれ、当社がこのような自然環境を育む社会貢献事業を行っているとどこかから聞きつけ、要望があったものです。しっかりと福祉施設の門の近くで根付いている荘川桜を見て、施設に入居されている皆様もさぞ、荘川桜の日々の成長を楽しみにしていることと思われます。また、植樹と合わせて日本のエネルギー問題や環境問題を勉強できる教材配布プロジェクトも合わせて行ないました。
表2 2002~2006年度の期間の荘川桜苗木植樹先(施設別)
施設別 | 植樹校(ヵ所)数 | 備考(年度別植樹ヵ所数) |
---|---|---|
小学校 | 47 | 2003年度10ヵ所 2004年度5ヵ所 2005年度14ヵ所 2006年度18ヵ所 |
中学校 | 32 | 2003年度11ヵ所 2004年度2ヵ所 2005年度8ヵ所 2006年度11ヵ所 |
高校 | 1 | 2003年度1ヵ所 |
幼稚園 | 6 | 2004年度2ヵ所 2005年度3ヵ所 2006年度1ヵ所 |
公民館 | 2 | 2003年度1ヵ所 2006年度1ヵ所 |
公園 | 4 | 2004年度1ヵ所 2006年度3ヵ所 |
発電所 | 2 | 2003年度1ヵ所 2006年度1ヵ所 |
福祉施設 | 5 | 2003年度1ヵ所 2006年度4ヵ所 |
その他 | 19 | 道の駅周辺、神社等 |
合計 | 118 |