荘川桜を守る者

豪雪地帯での保守作業

まずは荘川桜を保守管理するにあたり、ご苦労されている点からうかがえますか。荘川町はたいへんな豪雪地帯ですし、雪との闘いがたいへんなのでは。

日本中の町々でよく見かけるソメイヨシノとは異なり、荘川桜はエドヒガン(アズマヒガン)という山桜です。元来、山桜は開花時期や咲き方も不定期で、毎年同じ時期に同じ量の花を咲かせるわけではありません。それは、人工的に管理されたものではなく、自然の環境下で育っているためでもあります。自然は、桜にとってやさしい面ばかりではなく、たとえばこの荘川町は、たいへんな豪雪地帯として知られています。そのためにいろいろな問題が起こります。

私たちが冬にやらなければならない仕事の一つに、雪掻きや雪下ろしがあります。荘川桜は国道沿いに植えられているため、国道に積もった雪が、桜の方へ溜まってしまうこともあるのです。雪が多く積もると、その重みで荘川桜の枝が折れてしまいます。折れている枝を見つけたときは、元どおりにならないことは知っていながら、なんとかくっつきはしないものか、可哀想だなあと、まるで我が子が骨を折ってしまったときのような心境になります。実際、職人さんに頼み込んで、折れた枝を手当てしていただいたこともあるのですよ。

雪を下ろすと同時に、雪から桜を掘りおこす作業もしています。雪が幹や根を覆い隠したまま長い時間が経過すると、老木ですから悪影響が出ます。それに、積もった雪の上に雨が降ったりすれば、かなりの重さになって、樹木全体に大きな負担がかかってしまいます。今は、地域の宝でもあり、観光資源にもなっている桜に、いつまでも長生きしてもらおうと、いたわるような気持ちで管理させていただいています。