荘川桜を守る者

天敵鷽鳥との共存

雪のみならず、鷽鳥(うそどり)も荘川桜にとっての「天敵」であるとうかがいました。なぜ鷽鳥が桜に害を与えるのでしょうか。また、その問題に対してどのような取り組みをなさっているのでしょうか。

これも豪雪と関連していることですが、昭和56年に15メートルほどの降雪量を観測した大豪雪の年に、荘川桜にとって厄介な出来事が起きました。山々が雪に閉ざされてしまったことで、鷽鳥の食物がなくなってしまったらしいのです。そのため鷽鳥は、荘川桜の蕾を食べることで飢えをしのいだのでしょう。以来毎年冬場になると、どこからともなく鷽鳥が飛んできて、蕾を食べてしまいます。ですから鷽鳥は、荘川桜にとってというより、開花を楽しみにしている人間にとっての大敵といえるかもしれませんね。

鷽鳥対策は、長年頭を痛めている問題です。タイマーで定期的に鉄砲の音を鳴らしてみたり、大きな目玉の風船をぶら下げたり、鷽鳥の天敵であるカラスの模型を取り付けたり……。
いろんな策を施しているのですが、どれも効果がありませんでした。もう20年以上も、鷽鳥と私たちのイタチごっこが続いています。鷽鳥は、たいへん賢い生きものです。蕾に味をしめたのでしょう、大雪が降らない年でも、この荘川桜を目指してどこからともなく飛来してくるようになってしまいました。

仕方なく防護ネットを張って鳥避けを作ったこともありましたが、ネットに雪が積もって桜を痛めてしまう可能性があることや、景観が悪くなってしまうこともあり、現在では取り外しています。最近は、蕾ではなくこちらを食べてくれと鷽鳥用の餌を用意したりもしましたが、うまくいきません。しかし、考えてみれば鷽鳥も桜同様、自然界の生きものなのですよね。開花のためだけに過剰に人間が手を出して操作するということは、避けるようにしなければならないとも思っています。うまく鷽鳥と桜花が共存できる環境作りができないものかと、日夜智恵をしぼっているところです。