荘川桜を守る者

開花の喜び

樹齢450年以上の老木に花を咲かせるということは、困難である半面、開花時期の喜びもひとしおでは。

冬のたいへんさだけではなく、花が散った後の雨季からすでに、私たちの作業が始まっています。移植から携わってくださっている庭正造園さんをお呼びし、施肥、剪定、消毒などの手入れを行っています。夏は、木の周辺に雑草が生えてくるものですから、その草むしりをし、水やりも欠かしません。また、幹に生えた苔を落とすのも、この時期欠かせない作業です。幹をじめじめさせてしまうと、腐ってきてしまうのです。越冬して、春、花が咲く前にも、桜に柵を設置したり、周辺の清掃をしたり、歩道の補修をしたり……。1年中手間がかかります。

荘川桜の横を通るたびに、雪が重そうだなとか、蕾が膨らんできたなとか、気が気ではありません。

そして毎年ゴールデンウィークの時期が近づいてくると、日頃の苦労が吹き飛んでしまうくらい、開花が楽しみになります。そして、咲いてくれよと祈るような気持ちで蕾のふくらみを眺めています。荘川桜の咲き具合は毎年まちまちです。蕾が鷽鳥の被害に遭い、1分咲きにもならず、ほとんど花がつかない状態の年もあれば、満開の年もあります。咲かなかった年は、訪れたみなさんのがっかりされるところを見るのがとてもつらいです。花が咲いたときは、喜びはもちろんですが、ほっとするという安堵の気持ちが強いですね。

今年はさっぱりですねなどといわれたりすると、がっかりしてしまいます。逆に満開だと、所員全員が胸を張りたい気持ちになれます。いずれにせよ、ゴールデンウィーク期には、毎年観光客が大勢来られます。春、花が咲いたとき、それをご覧になられた方々の笑顔は、私たちにとって、なによりの褒美だと思っています。開花時期はわずか1週間ほどですが、その時期に1年間のすべての苦労が報われます。とくに開花し始めた日は、私たちにとって心から幸せになれる日なのです。