流れ込み式水力発電所でカーボンフリーシフトに貢献
フィリピン共和国 Vol. 1
レイクマイニット水力発電所
Global J-POWER ―世界とともに―
Lake Mainit Hydro Power Plant
フィリピン共和国
再エネ重点化を進めるフィリピン
経済発展が著しいASEAN諸国の中でも一二を争う成長を遂げているフィリピン。電力需要は、家庭用や商業用を中心に増加傾向にある。日本同様、国内で消費される石油・石炭は輸入に依存しており、電力料金もASEAN諸国で最も高い。電源構成は約68%が化石燃料由来の火力が占める。そんなフィリピンでは今、世界的な気候変動問題に対応し、CO2を削減するため、再生可能エネルギー(以下、再エネ)に重点を移しており、フィリピン政府は、2030年までに電源構成の35%を、40年までに50%を再エネ由来のカーボンフリー電源にする計画を立てている。
J-POWERは同国で、1970年代から様々なコンサルティング業務を行ってきたが、1997年にレイテ地熱発電所(レイテ島)、2005年にカラヤン揚水発電所、ボトカン水力発電所、カリラヤ水力発電所(いずれもルソン島ラグナ州)などに資本参加してきた。
直近では2023年3月に運転開始したレイクマイニット水力発電所に資本参加。同発電所を担当する国際営業部 森山 索部長代理に話を聞いた。
「レイクマイニット水力発電所は、ミンダナオ島にある流れ込み式の水力発電所です。取水源は天然のマイニット湖となっており、湖と発電所間の約30mの高低差(落差)を利用して発電しています」
J-POWERは、CO2フリー電源を拡大するJ-POWER "BLUE MISSION 2050"を策定し、各方面で実行に移している。同発電所への資本参加もこのミッションの一環だと森山さんは強調する。
さらに「マイニット湖の周辺に住む人たちは、雨季に湖水位が上昇することにより、たびたび浸水被害に遭っており、この発電所は洪水軽減効果の役割も担っています」と語る。
日本人への信頼は厚い
「レイクマイニット水力発電所では、運転開始直後に初期トラブルが発生しましたが、J-POWERの関連部門の協力で、なんとか解決してきました。現地で関わるフィリピンの人たちは、必要な改善や補修作業に対してコストをかけることの理由をきちんと説明すると納得してくれるので、仕事がしやすいと感じます」
森山さんは今、同じミンダナオ島で計画中のブラノグバタン水力発電所(出力:3万3,500kW)も担当。こちらもダムはなく、川に堰をつくって発電所を建設する予定だ。
「日本国内では水力の未開発地点は限られてきていますが、ミンダナオ島には未開発地点がまだまだ残っています。建設段階から現場に関わることができるので、J-POWERが長年にわたって培ってきた水力開発のノウハウや知見を若手に継承していくことにも役立つのではないでしょうか」
同発電所は、2030年の営業運転開始を目指して、現地調査などを行っているところ。
森山さんは、「これらの水力開発を通じて、フィリピンのカーボンフリー電源へのシフトに貢献していきたい」と話してくれた。