火力編@磯子 教師ツアー

エコ×エネ体験ツアー 火力編@磯子 教師ツアー 2023年ツアーレポート

先生方のためのエコ×エネ体験プロジェクト2023 火力編

先生方のためのエコ×エネ
体験プロジェクト2023 火力編

 「エコ×エネ体験プロジェクト」は、J-POWERグループが「エネルギーと環境の共生」をめざして取り組んでいる社会貢献活動の一つです。
 社会が持続可能な発展を遂げていくためには、エネルギーと自然環境を「つながり」として捉え、どちらも大切にする心と技術を育てることが必要だと考え、小学生親子を対象に「エコ×エネ体験ツアー」を開始したことが「エコ×エネ体験プロジェクト」の始まりで、その後、学生向けの体験ツアー等プログラムを増やしてきました。
 先生方向けの体験ツアーは、学校現場で次世代層の育成を担っており、先生方の理解醸成はもちろんのこと、先生方ご自身の体験を通じて先生から生徒への形で「エネルギーと環境の共生」を考えるきっかけの広がりがでればとの思いで2018年にスタートしました。そうした考えの下、学習指導要領の教育目標の一つである「持続可能な社会の創り手の育成」を基本視点に置きながら、「社会課題について多面的に考える」をテーマとして、授業に活かすためのヒントを探ってもらうことを意識しています。
 今年は4年ぶりの対面開催となり、たくさんの先生方にご参加いただきました。

実施概要

  • 日程:2023年8月7日(月) 10:00~17:30
  • 場所:磯子火力発電所・三渓園
  • 参加者:小学校・中学校 教員28名

プログラムのポイント

  • 地域の環境対策にさまざまな工夫を凝らした磯子火力発電所を見学します。
  • 発電所で働く社員との対話を通じて、持続可能性と将来のエネルギーについて考えます。
  • 問題発見・解決能力等の育成に不可欠な、多面的な考え方を養うツール『エネルギー大臣になろう!』を体験できます。
  • さまざまな地域や校種の先生方とのセッションを通じ「エネルギーと環境のなぜ?」を参加者間で共有し、授業づくりに向けたヒントを得ることができます。

プログラム

9:30磯子駅集合

台風6号の影響で急に降り出した雨も、集合時間にはピタリと止み、エコ×エネ体験ツアー日和になりそうな予感。磯子駅からバスに乗って、磯子火力発電所まで向かいます。

10:00アイスブレイク・磯子火力発電所紹介

今回も様々な地域、校種の先生方にご参加いただきましたので、まずはアイスブレイクです。皆さんに配布したエコ×エネオリジナル・リングノートに、大きく書いてアンケートに答えます。

アイスブレイク

10:20磯子火力発電所見学

緊張がほぐれたところで、3グループに分かれ「電気が生まれている現場」の見学に出発です。ここからは発電所の現場で長年働く社員が解説しながら案内します。

展示室

発電所の模型を使い、発電の流れ、各設備の特徴など全体像の解説です。

展示室展示室
1号機タービン・発電機

磯子火力発電所は、排気ガス・景観等様々な環境対策とエネルギー効率向上を図った都市型石炭火力発電所です。展示室の模型で確認した発電機の、実際の大きさやタービンの回転音を体感しました。

1号機タービン・発電機
運転センター

365日24時間体制で動く運転センターのパネルには、まさに今ここで生まれている電気の量が表示されています。また、大気汚染の原因となる硫黄酸化物(SOx)、窒素酸化物(NOx)、ばいじん濃度などがリアルタイムで確認でき、横浜市との環境保全協定以下の数値になるよう管理されていることがわかります。
現在はコンピューターを使って行っている制御ですが、以前はたくさんの機械を手動で操作していました。当時の写真をみながら、実際にその作業をしていた社員ならではの苦労話も飛び出しました。

運転センター運転センター
1号機ボイラー

離れていても熱さが伝わってくるボイラーの小さな覗き窓から、石炭の微粉が燃焼する様子を、一人ずつ耐熱用のマスクを通して覗きます。
先生方は、今後の授業で子ども達に見せたいと、自身が覗いている様子をお互いのカメラに収めていました。

1号機ボイラー
ボイラー棟屋上

ボイラー棟の屋上からは発電所の敷地全体や、近隣を見渡すことができます。向かい岸に見える石炭置き場(コールセンター)や石炭を運ぶための船(セルフアンローダー船)、高さ200mの煙突が楕円形である理由などの説明を聞きました。

ボイラー棟屋上

11:30質疑応答、発電所で働く社員との交流

見学を終えたグループごとに改めて質疑応答と社員との交流の時間です。「今まで経験した中で一番大きなトラブルは?」、 「どうしてJ-POWERに入ろうと思ったのか?」など、少人数グループならではの踏み込んだ質問がありました。
最後に、「火力発電を自分の生徒にどのように伝えていくべきか?」という問いでは、社員3名からそれぞれの想いが伝えられました。常に環境に配慮をしつつ、365日24時間、暑い日も寒い日もトラブルを起こさず、エネルギーを安定供給するために、たくさんの関係者が関わっているということを、改めて実感する対話となりました。

質疑応答

12:40昼食休憩 三渓園

磯子火力発電所の見学を終え、国指定名勝の三渓園へバスで移動します。 三渓園は、製糸・生糸貿易で財を成した実業家・原三溪が開園した日本庭園です。暑い日差しの中でしたが、美しい蓮の花が私たちを出迎えてくれました。素晴らしいロケーションの鶴翔閣で食べる横浜名物崎陽軒のシューマイ弁当には、先生たちの顔も自然とほころんでいました。

昼食休憩 三渓園

13:40三渓園のはなし・電気のはなし(基礎編)

午後のプログラムは、三渓園と磯子火力発電所のつながりの話から始まります。日本庭園から見えないように工夫を凝らした磯子火力発電所の煙突には、配置、形状、色彩において景観と調和するための配慮がありました。 続いて、J-POWER山本による「電気のはなし(基礎編)」で、電気の特性についておさらいをしたところで、いよいよ午後のメインプログラムです。

三渓園のはなし・電気のはなし

14:10ワークショップ「エネルギー大臣になろう!」

J-POWERとサイエンスカクテルが共同制作したカードゲーム「エネルギー大臣になろう!」をグループに分かれて体験します。これは火力、水力、風力、原子力などさまざまな電源のメリット・デメリットなどを体感しながら、発電所建設を進めるシミュレーションゲームです。

テーブル代わりの“えんたくん”(丸い段ボール)をグループの真ん中において、文字通りひざをつき合わせながら、各グル―プを一つの国と仮定し、電気料金や設備利用率、環境負荷などの目標を立て、エネルギー政策を決めていきます。
途中、天変地異や技術革新などのイベントが発生し、歓声が上がったり、険しい顔つきで議論したり、皆さん真剣に取り組んでいる様子でした。

終了後、先生方の感想では、「現実社会においても、どの国も悩んでいることを改めて実感した」、「午前中に“環境に優しい取り組み”を学んだのに、自分がエネルギー大臣になったら、環境負荷をそっちのけにしてゲームに勝つことを考えてしまった」などの声が聞かれました。

ワークショップ「エネルギー大臣になろう!」ワークショップ「エネルギー大臣になろう!」

16:10エネルギーを巡る情勢 ~カーボンニュートラル実現に向けた取り組み~

最後にJ-POWER多比良から、エネルギーを巡るトレンドや、気候変動をめぐる状況などを、最新のデータや各国のエネルギー事情の紹介と合わせて解説しました。また、カーボンニュートラルの実現にむけたJ-POWERの取り組みも紹介しました。
先生方からは「50Hz-60Hz間等の系統強化に向けた取り組み」や、「次世代のエネルギー」についてなど、次世代層の未来を考えた質問が多く出されました。

エネルギーを巡る情勢 ~カーボンニュートラル実現に向けた取り組み~

16:40整理と対話(参加者セッション)

本日のまとめは、グループに分かれて率直に話し合う「整理と対話の時間」です。今日一日を通して「心が動いたこと・驚いたこと」、「授業に活かしたいこと」、「どんな授業ができそうか」などを話し合っていただきました。 先生方からは「理科や社会だけでなく教科横断的に教えていきたい」、「徹底討論や、投票を行うような形式で生徒が真剣に考える授業をしてみたい」などといった具体的な意見が出されました。

整理と対話(参加者セッション)整理と対話(参加者セッション)整理と対話(参加者セッション)

17:20閉会

エコ×エネ体験プロジェクトは、「エネルギーと環境の共生」を目指し、社会課題を自分事として捉え、行動を起こすきっかけを提供することを目的として運営しています。持続可能な社会の実現に向けて、次世代層の育成を日々学校現場で担っている先生方と力を合わせ、よりよい未来を一緒に作っていきたいと締めくくり、本日のプログラムは終了となりました。

閉会閉会

参加者の声(抜粋)

  • やはり、見学や体験は大きな学びだと感じました。
  • エネルギーについて無知だったため参加しました。まだ「分かった!」には至っていませんが、入り口に立てたような気がします。
  • 日本のエネルギー問題や環境問題はとても大きな期待と課題を背負っていて、様々な視点、視野、価値観、国事情、等々一筋縄ではいかないことも多いとは思うのですが、踏み出してまずは知ることが大切だと思います。大人の熱量を子どもたちにしっかり伝えていけたらと思います。
  • 火力発電所を見学し、実際の話を聴くことができ、発電について身近に感じることができました。児童にどのように伝えるかは、じっくり考える必要がありますが、総合や社会などを通して学習できればと思います。
  • 石炭のメリット、デメリットがある中でも、先端技術を見れたのが大変良かったです。エネルギーは人類が生きていくうえでどの国も大変重要な課題だと思います。近未来や100年後にはこんなところを目指しているというような話なども聞けたら嬉しかったです。
  • エコ(自然の力)×エネ(人間の力)って、相反するものではなく、共存できるものだし、それに向けて日々尽力している人がいるんだな、エネルギーって、“自然”のことだけではなく、“マンパワー”も働いているんだなと、考えさせられました。