室戸岬の御蔵洞(高知県室戸市)
小島 なお

「音のソノリティ」を詠む

洞窟は誰の身体か滴れる空と海との間(あわい)の祈り

歌人 小島 なお

てき、てき、ときん。さきほどまで辺りに聞こえていた波音が遠くなり、ひんやりと暗い岩壁から滴り落ちる水の音が静寂に反響する。

高知県室戸市。眼前に室戸岬の広がる海岸に並ぶ洞窟、御厨人窟(みくろど)と神明窟(しんめいくつ)。2つを合わせて御蔵洞(みくらど)とも呼ばれ、弘法大師・空海が青年期に修行した地として知られている。住居としていたとされる御厨人窟の中から眺めた視界に広がる空と海に心を動かされ、「空海」と名乗ったという伝承も残る。空海による出家宣言の書『三教指帰(さんごうしいき)』の序文には、洞窟での修行時代に「明星来影す」と後の悟りに繋がる神秘的な体験をしたと記されている。

長い歳月をかけて波に岩が削られてできた2つの洞窟。ふかぶかと暗い洞には古からの無数の祈りの声が染みこんでいるだろう。空と海の狭間を生きる人々の信仰心がそこには宿る。

※「音のソノリティ」第1128回放映「室戸岬の御蔵洞」を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは高知県で魚梁瀬発電所、二又発電所、長山発電所、早明浦発電所などを運営しています。

太平洋の激しい波が打ち寄せる室戸岬にある御厨人窟。その波音は、環境庁(当時)が1996年に選定した「残したい"日本の音風景100選"」に選ばれている。写真は、御厨人窟内から入口を見た光景。(写真:玉置じん/アフロ)

PROFILE

こじま なお

東京都出身。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2025年12月、第四歌集『卵降る』刊行。居合道三段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20:54 ~ など