エコ×エネ体験ツアー 水力編@御母衣小学生親子ツアー 2023年ツアーレポート
エコ×エネ体験ツアー水力小学生親子編@御母衣
2023ツアー体験レポート
J-POWER(電源開発)が2007年から毎年開催している「エコ×エネ体験ツアー水力小学生親子編@御母衣」は、御母衣(みぼろ)ダム・発電所とその周辺の大自然を舞台に、親子で楽しみながらじっくりと自然と電気のつながりについて学ぶことができる1泊2日の人気のツアーです。新型コロナウイルスの影響により2020年は中止、2021年からはオンラインで開催されていましたが、2023年は4年ぶりに現地で開催されました。 ツアーに同行して、エネルギーは森や水といった自然環境とも密接に関わっていること、普段何気なく使っている電気の大切さを実感する良い機会になりました。初めて出会った全国の参加者とともに学び、新しい発見や感動を分かち合った、2日間の充実した時間をレポートします。
ツアー概要(A日程)
- 日程:2023年7月25日(火)・26日(水)
- 参加者数:13組26名
- 場所:御母衣ダム、御母衣電力所、トヨタ白川郷自然学校
スケジュール概要 ─ <1日目 >
- 御母衣ダム天端(てんば)の見学
- 合掌家屋「旧遠山家」にて昼食
- 発電所の体験プログラム(御母衣発電所)~五感を使って発電所を体験~
- 施設内の合掌家屋で昔の暮らし解説/電気の話
- ナイトウォーク
- 交流会
スケジュール概要 ─ <2日目 >
- 源流の森ウォーク
- 水力発電に挑戦~自然の川でダムをつくろう~
- まとめのワークショップ
- ふりかえり~2日間の体験をふりかえる時間~
- 荘川桜で記念撮影
1日目10:00集合、出発
集合場所となったJR木曽川駅では、改札を出るとスタッフの皆さんが笑顔で迎えてくれました。最初の目的地である御母衣ダムに向かうバスの車内では、自己紹介やゲーム、クイズなどで盛りあがりました。 途中、山奥の高速道路を走っているときに「分水嶺(ぶんすいれい)」について教えてもらいました。分水嶺とは水の流れの向きの境目のことで、この辺りでは岐阜県のひるがの高原を境に北側の日本海に流れる庄川と、南側の太平洋に流れる長良川に分かれています。ダムを作るには落差が大きいほうが有利なため、比較的なだらかな南側の長良川よりも傾斜が急な(落差の大きい)北側の庄川にダムが多く作られたそうです。話を聞いているうちに、最初の目的地、御母衣ダムに到着しました。
1日目12:15御母衣ダム天端からの見学
バスを降りると、ダムのてっぺん「天端」から自然の中にどっしりと構えた御母衣ダムが見渡せました。電源開発 御母衣電力所所長代理の頭本氏から、御母衣ダムは日本初の傾斜土質しゃ水壁型ロックフィルダムで、粘土質の土の外側に硬くて風化しにくい花崗岩(かこうがん)を積み重ねて作られており、石の重さで水圧に耐えていること。大きな石を積み重ねたロックフィルダムはコンクリートのダムよりも10%ほど費用を抑えて建設できるという説明を聞きました。
豪雪地域である庄川上流域の雪解け水や雨水、山々が蓄えた湧水を受け止めている御母衣ダムの総貯水量は約3億7,000万トン、東京ドームやナゴヤドーム約300杯分の水を貯めることができるそうです。御母衣発電所で発電に利用した水は、地下の放水管を通って9キロ下流に位置する鳩ケ谷貯水池に流れ込んでいます。質問タイムでは、「大きなダムの中には生き物は住んでいますか?」「大きな石をたくさん積んでいますが、地震で崩れたりしませんか?」などの質問が寄せられました。
1日12:55昼食(合掌家屋「旧遠山家」にて)
続いて合掌家屋「旧遠山家」でお弁当を頂きました。食後は、大きな囲炉裏や養蚕を行っていた場所、家の外のようすなどを見学して昔の生活に思いをはせる親子や、御母衣電力所のスタッフのもとへ行きダムについて質問する親子の姿も見られました。
1日14:05発電所見学
昼食後は御母衣発電所に移動し、グループに分かれて見学しました。電源開発 御母衣電力所所長代理の門脇氏と一緒に車に乗り込み、長さ約1,200メートルの搬入路トンネルから発電機室へ向かいます。搬入路トンネルとは、地下発電所の工事や大きな機械を運び入れるために作られたものです。現在は、発電所の定期点検や補修工事などで利用されています。水力発電は、高いところから低いところへ水を流すときに発生するエネルギーを利用した発電方法で「水の量×高さ」で発電量が決まるため、発電所は地面よりも低い地下にあるのです。
発電機室に到着すると、大きな2台の発電機が大きな音を立てて動いていました。御母衣発電所は、ピーク調整電源といって電気の需要に応じて稼働させたり、止めたりしている発電所です。以前は、工場などが稼働する昼間に水力発電を使っていましたが、近年は天気の良い日の昼間の電気は太陽光発電で賄い、太陽が沈む夕方から夜にかけて水力発電を使うことが多くなっています。しかし、とても暑かったこの日は、御母衣発電所の発電機を昼間も稼働させないといけないくらい電力需要が高いと教えてもらいました。
ここでは最大毎秒約130トンの水を利用して発電を行っています。これは、学校のプール(25m×12m×1.2m=360トン)が約3秒で満杯になる量と聞いて、みんなでびっくりしました。発電機室のさらに下にある水車が1分間に225回転して、2台の発電機で最大21万5千kW(キロワット)の電気をつくることができるそうです。
発電機室にはトヨタ白川郷自然学校の「ある」が待っていて、子供と大人に分かれてボールを回しながら1分間に何回転させられるかというゲームをやりました。どちらも1分間に100回転にも届かず、水車の回る速さを感じました。また、エコ×エネ体験ツアーお馴染みの博士「ドクター」によるペットボトルを使った水力発電の実験では、ペットボトルに入れた水をホースに勢いよく流すと、ホースの先に取り付けられた発電機の水車が回転し、コイルの中の磁石が回転することで電磁誘導によって電気がつくられ、ライトが点灯しました。水力発電の仕組みがよくわかり、また、ライトが点灯したときには全員が感動の声をあげました。
実験が終わると、さらに下のフロアへ移動して水車と発電機をつなぐ水車ピットが回るようすを見学しました。万が一、周りの機械に触れて発電が止まってしまわないように2人1組ずつ案内してもらいます。生活に欠かせない電気だからこそ、トラブルを起こさないように慎重に作業をしているという話が印象に残りました。
また、同じフロアでは以前使われていた運転制御室も見ることができました。J-POWERの「シゲさん」によると、約30年前までは1日24時間、3交代で水車や発電機などの運転制御をここで行っていましたが、今は愛知県春日井市にある制御所から遠方制御を行っているそうです。御母衣電力所では、事故・障害対応や補修点検を行っています。
見学しながら地下深くまで降りてきた一行は、インクラインと呼ばれる産業用・貨物用のケーブルカーに乗車します。インクラインの長さは223m、22度の急勾配を約3分かけて登って行きました。インクラインを降りた後は、発電した電気を屋外の変圧器に送る電線が入っている箱が並んだ迷路のような通路を抜けて地上へと戻ってきました。地上へ戻ってきた後は、ロックフィルダムを麓から見学しました。大きな岩がたくさん積まれたようすを下から見上げた景色は迫力があり、参加者からは「かっこいい!」という声があがりました。
続いてMIBOROダムサイドパークに行き、発電所内部やダムについてわかりやすく示したジオラマを見学しました。門脇氏の解説を聞きながら、今見学してきたばかりの発電所やダムについて情報を整理しながら見ることができたので、より理解が深まりました。
1日17:15夕食
発電所見学後は、バスで移動してトヨタ白川郷自然学校(以下、自然学校)へ行きます。高台にあるため、移動中に白川郷の合掌家屋が一望できました。夕食では、地域の素材を使ったフランス料理を堪能しました。食事中はいろいろなテーブルから、「どこから来たの?」「夜のナイトハイク楽しみだね」など、楽しそうな会話が聞こえてきます。
1日18:45昔の暮らし/電気の話
夕食後は自然学校内にある合掌家屋に集まって、「昔の暮らしの解説」と「電気の話」を聞きました。「昔の暮らしの解説」では、部屋の電気を消し、皆で囲炉裏を囲み、小さなろうそくの明かりのもとで、自然学校スタッフの「ある」が、2つの木材を手に取り、「囲炉裏で使われていた木材はどちらでしょう?」というクイズを出題しました。実際に2つの木材を手に取ってみると、重い木はミズナラで、軽い木はスギでした。木の密度の違いによって重さが違い、木の密度が高く燃焼スピードが遅いミズナラの木が、同じ時間燃やしても長く明かりが灯るため囲炉裏で使われていたことを教わり、昔の人の暮らしの知恵を学びました。
1日19:15ナイトウォーク
合掌家屋を出ると辺りは薄暗くなっていて、多くの参加者が楽しみにしていたナイトハイクに出発です。ナイトハイクでは自然学校近くの森の中の道を、電気なしで歩いていきます。 電気がまったくない真っ暗な道を歩くのは、街中で暮らす参加者たちにはなかなかできない経験でした。月明かりがわずかに差し込む森の中を虫の声や木々が風に揺れる音に耳をすませながら歩いて行きました。森を抜けて少し歩くと、ホタルの鑑賞スポットに到着しました。最初は目を凝らさないと見られなかったホタルでしたが、時間が経つにつれたくさんのホタルが出現しました。参加者たちは、目の前を飛んだり、肩に止まったりするホタルに感動していました。ホタルがたくさん見られるようになったのは、ホタルが現れる時間帯になったからだけではなく、皆の目が暗闇に慣れてきたからだと「ある」から参加者たちに伝えられました。最初は足元に慎重になっていた足取りも暗闇の中で次第に慣れてきたような気がしました。
森の中を歩いて自然学校に戻る途中でろうそくを使った実験を行いました。暗い中、片目を手で覆って、もう片方の目で数秒間ろうそくを見つめます。そして、ろうそくを消して真っ暗な中で手を離すと、手で覆ったほうの目だけが暗闇に慣れていたことがよくわかりました。
1日20:00交流会
自然学校に戻ると、交流会が行われました。グループごとにテーブルに分かれて、実験キットを使い、楽しみながら発電の仕組みについて学んだり、J-POWERオリジナルの「エコ×エネかるた」を楽しんだりしました。
出発から盛りだくさんのプログラムで、あっという間の1日でした。
1日目の終了後に、2組の親子にインタビューしました。
「えいと」さん&「みそ」さん親子
- ツアーのことは以前から知っていたので、いつか参加したいと思っていました。コロナ禍で上の子の時は現地での参加が叶いませんでしたが、今回は下の子と参加できて良かったです。初めて見たロックフィルダムはとてもかっこよかったです。電気がある生活が当たり前だったので、電気についてあらためて考える良い機会でした。(みそさん)
- ツアーに来る前から楽しみで、ワクワク・ドキドキしていました。ダムはとても大きくてびっくりしました。一番楽しかったのはナイトハイクで、動物が出てきたり、ホタルに会えたりしたので嬉しかったです。暗闇で目が慣れることも体感できました。明日の朝ごはんと、ダムを作って水力発電をする実験も楽しみです。(えいとさん)
「ケイ」さん&「ともあり」さん親子