石炭火力発電所由来のCCS実証事業へ参画
オーストラリア Vol. 1
CTSCoおよびCCSプロジェクト
Global J-POWER ―世界とともに―
CTSCo Carbon Capture and Storage Project
オーストラリア
豪州初となる石炭火力由来CCS実証
J-POWERは1981年、日本への石炭安定供給のため、オーストラリア国に現地法人J-POWERオーストラリアを設立し、同国内の炭鉱への投資を行ってきた。また、揚水や風力などの再生可能エネルギー事業にも参画し、現地への電力供給で貢献するほか、安価な褐炭を利用した水素生産の実証実験にも参加し、同国と良好な関係を築いてきた。
今回紹介するのは、現在、J-POWERが大手資源会社グレンコア社(スイス国)、丸紅株式会社(日本)と共同で進めている「CTSCoおよびCCSプロジェクト」。既存の石炭火力発電所からCO2を回収し、地中に貯留するまでの技術検証を目的とした実証事業だ。J-POWERで本事業を担当する国際営業部開発営業室先進エネルギータスク 浅野岳さんにお話を聞いた。
「本CCS(CO2の回収・貯留)プロジェクトは、発電所の排ガスからCO2を取りだし、直接地中に埋めてしまうため、CO2を削減するキーテクノロジーの一つとして注目されています。これまでは石油や天然ガス増産のために油田の井戸に圧入するものや、枯渇油田を利用したものなどが知られています。今回のプロジェクトのように発電所排ガスCO2を新規の土地で貯留だけを、しかも海洋や海岸線ではなく、陸地で行うのは、豪州では初めての試みではないかと思います」
このプロジェクトは現在、日本でいう環境影響調査報告を行い、州からの許認可を待っている段階だ。そもそもオーストラリア国がCCS技術に積極的な背景には、石炭産業が同国の雇用や輸出、発電などで大きなウェイトを占めていることがある。
「今回、実証事業を行うミルメラン石炭火力発電所は、ブリスベンから西に約200kmのところにあり、そこでCO2を回収し、さらに西へ約100km離れた牧場エリア内にCO2を輸送して地中に圧入・貯留する計画です」
貯留地点は、ボーリング調査等によって、約2km下に水を通さない不透水層とCO2を貯留できる砂岩層があること等を確認済み。設備のメーカー選定なども終わり、許可が下りればすぐに設備の建設が始められるという。
2050年カーボンニュートラルを目指して
国際営業部に在籍している浅野さんは、同時にJ-POWERの組織横断的な「水素・CCS特命ライン」のメンバー。この特命ラインは、CO2フリー水素の製造・供給、および発電利用を迅速かつ効率的に具体化するためのタスクフォース。J-POWERが持つ石炭ガス化技術を用いて安価に水素をつくり出し、2050年にカーボンニュートラルと水素社会の実現を目指すJ-POWER "BLUE MISSION 2050"を具体的に進める実働部隊だ。浅野さんは今回のプロジェクトで得た知見を、これからの様々なプロジェクトに活かしたいと語る。
「実際の圧入や設備稼働の実績データが取れるので、そうした知見をこれからのCCS開発に活かしていきたい。そしてカーボンニュートラルと水素社会の早期の実現に貢献したいと思います」