大学生向け 火力編@磯子ツアー レポート

エコ×エネ体験ツアー 火力学生編@磯子 2024年ツアーレポート

「エコ×エネ体験プロジェクト」とは、J-POWER(電源開発株式会社)が「エネルギーと環境の共生」をめざして取り組んでいる社会貢献活動のうち、エネルギーと自然環境を相反する存在ではなく“つながり”として捉え、どちらも大切にする心と技術を育てるために専門性の異なるさまざまなパートナーと協働しながら運営している、体験型の環境・エネルギー学習プログラムです。その中の一つとして実施しているのが、「エコ×エネ体験ツアー 火力学生編@磯子」です。エネルギーや環境のことを中心に、たくさん学び、仲間たちと話し、じっくり考えた3日間。どんな体験をしてきたのか、たっぷりとレポートしていきます!

<ツアー概要>

  • 日程:2024年2月21日(水)~2月23日(金)
  • 参加者:学生29人
  • 場所:横浜研修センター

<ツアーの狙い>

  • エネルギー・環境問題をはじめさまざまな社会課題について考え、自分事として捉えよう
  • 専門性や立場の違う人との対話の重要性を認識し、複眼的/多角的に物事を考えよう

<2024年ツアーのテーマ>

  • 「エネルギーの安全保障」~世界情勢の中での日本のエネルギーの今~

1日目 集合 「エコ×エネ体験ツアー火力学生編@磯子」へようこそ!

ツアースタートの朝。全国各地から(中には海外からの留学生も)、学生たちが続々とやってきます。これから3日間過ごす横浜研修センターの会議室では、初対面の相手に少し緊張した表情ながら、近くに座っている人と自己紹介をし合う様子が見られます。数分も経つと、仲良さそうに会話を楽しむグループもできて、交流の輪がどんどん広がっていきました。

産業振興センター駅を出ると、スタッフがお出迎え
産業振興センター駅改札口を出ると、スタッフがお出迎え
小雨が混じる天気の中、横浜研修センターに集まってきた学生たち
小雨が混じる天気の中、横浜研修センターに続々とやって来る学生たち

10:00 オリエンテーション・アイスブレイク 聞いて、考えて、話す、「みんなでつくるツアー」のスタート!

まず、主催J-POWERの多比良(シゲさん)から開会挨拶としてエコ×エネ体験プロジェクトの概要説明と本ツアーのテーマとゴールの話がありました。続いて、スタッフ紹介を済ませオリエンテーション。進行を務めるサイエンスカクテルの古田氏(ゆかりん)が、ツアー中心掛けてほしいことやこのツアーはみんなでつくる場であるということを説明すると、学生たちの表情が一気に引き締まります。改めて、ここで学ぶんだという意識が強まったようです。

J-POWERの多比良氏(シゲさん)による開会挨拶
J-POWERのシゲさんによる開会挨拶
スローガンは「よく聞こう(インプット)」「たくさん考えよう(学び)」「いっぱい話そう(アウトプット)」
「よく聞こう(インプット)」「たくさん考えよう(学び)」「いっぱい話そう(アウトプット)」がツアーの心構え、このツアーは「みんなで作る場です」とゆかりん

場の空気が引き締まってきたところでアイスブレイク。「今日はどこから来ましたか?北の人から順に並んでみよう」ということで、全員立ち上がり、互いの場所を確認し合いながら並んでみると……。一番北は北海道、そして南は台湾!次は誕生日順に並ぶため、近くの人に声をかけながら大きな輪を作りました。

出身地順では「どっちが北?」「え?うちのすぐ近く!」など大盛り上がり出身地順では「どっちが北?」「え?うちのすぐ近く!」など大盛り上がり
出身地順では「どっちが北?」「え?うちのすぐ近く!」など大盛り上がり
地域順に並ぶ際には「どっちが北?」「え?うちのすぐ近く!」など大盛り上がり

10:30 カードゲーム「エネルギー大臣になろう!」 経済性、安定供給、環境、すべてを満たす発電は……?

「エネルギー大臣になろう!」は、グループごとに1つの国となって、エネルギー政策の実現をめざすカードゲームです。はじめに配られた国カードには国タイプ(先進国か発展途上国、資源の有無、国の広さなど国ごとの条件)、予算、必要設備能力、電気料金、自給率などが書かれています。その上で話し合いをして、電気料金や稼働率、環境負荷などについて目標(マニフェスト)を立てて、予算内で発電所を建設。最終的に、電気料金、稼働率、自給率、環境負荷、国民満足度、合意形成の点数で順位を競います。

まず、J-POWERの坂田(セブン)から「電気の話」。電気の特性、発電と送電について、関東と関西での周波数の違いなど、基礎知識を確認します。

電気のキーワードは「S(安全性)+3E(安定供給・経済性・環境)」
電気のキーワードは「S(安全性)+3E(安定供給・経済性・環境)」
まずは国名を決めるところから。グループによってかなり個性が出ますまずは国名を決めるところから。グループによってかなり個性が出ます
電気の基礎知識を学んだら早速ゲームへ。まずは国名を決めるところから。グループによってかなり個性が出ます。
発電所は、水力、石炭、石油、ガス、原子力、地熱、風力、太陽光、バイオ、潮力、水素。これらをどう組み合わせるか……
発電所は、水力、石炭、石油、ガス、原子力、地熱、風力、太陽光、バイオ、潮力、水素。これらをどう組み合わせるか……
タブレットに発電所建設数を入力していくと、電気料金や自給率、稼働率、環境負荷が自動的に計算されます
タブレットに発電所建設数を入力していくと、電気料金や自給率、稼働率、環境負荷が自動的に計算されます

電気料金を下げて経済安定性を高めたいけれど、そうすると環境負荷が上がってしまう。環境負荷を下げると、稼働率が下がって停電してしまうなど、すべてを満たすことはかなり困難なようです。資源の有無、経済力などによっても変わってきます。さらに、途中で配られるイベントカードにより、地震、戦争、反対運動、系統トラブル、異常気象などが発生して、各国のエネルギーに大きな影響を与えます。

ある国では系統トラブルが発生!自然エネルギー以外の発電所で稼働率が低下
ある国では系統トラブルが発生!自然エネルギー以外の発電所で稼働率が低下
優勝したのは、電気料金、自給率、環境負荷で1位になった「エコ王国」!
優勝したのは、電気料金、自給率、環境負荷で1位になった「エコ王国」!
結果発表後、それぞれの政策のポイントを発表結果発表後、それぞれの政策のポイントを発表
結果発表後、それぞれの政策のポイントを発表

13:30 「エネルギ-大臣になろう!」の振り返り エネルギー大臣になったからこそ分かる、エネルギー政策の難しさ

昼食を挟んで、午前に行った「エネルギー大臣になろう!」の解説と振り返り。サイエンスカクテルの永井氏(ともやん)の解説で、火力、原子力、バイオマスなどいろいろな発電方法があり、それぞれに環境の影響などが異なること、日本のエネルギー使用量が過去50年で激増していることなどを学びました。参加者たちは「エネルギー大臣になろう!」を体験しているので、電力の安定供給と環境問題へ対応の両方を解決することの難しさが身をもって分かります。

改めてエネルギー使用量の増え方を知り、エネルギー大臣の目線で考える参加者たち改めてエネルギー使用量の増え方を知り、エネルギー大臣の目線で考える参加者たち
解説をするともやん。日本のエネルギー使用量の増え方をあらためて知り、エネルギー大臣の目線で考える参加者たち

13:50 ドクターの発電の基礎(火力発電実験) リズムに乗って、火力発電の仕組みを学ぶYO!

次は、2日目の火力発電所見学に備え、身近なものを使って火力発電の仕組みを学ぶ髙倉環境研究所の髙倉氏(ドクター)の実験タイム。歌あり、踊りあり、ラップあり(?)の楽しい実験で、やかんの水を沸かして発生させた蒸気でプロペラを回し、電気を作る様子を学びました。

ドクターと助手のセブンはこの後もたびたび登場
ドクターと助手のセブンはこの後もたびたび登場
右手と左手の形、なんだかわかりますか?もうこのサウンドが耳から離れません!
右手と左手の形、なんだか分かりますか? もうこのサウンドが耳から離れません!

14:05 地熱発電パネルディスカッション・デモンストレーション 古い温泉街で地熱発電を開発するとなったら、どんな課題が出てくる?

次のプログラムの前に、J-POWERが運営する宮城県大崎市の鬼首地熱発電所の360度映像を視聴しました。地中深くから取り出した蒸気で発電する地熱発電は環境負荷が低いだけでなく、天候に左右されずに安定的な運転が可能な純国産再生可能エネルギーとして期待されています。

鬼首地熱発電所の映像を見ながら地熱発電について説明するシゲさん
鬼首地熱発電所の映像を見ながら地熱発電について説明するシゲさん

では、実際に地熱発電を開発しようとしたら、どのような課題が生じるでしょうか。磯子山温泉という架空の温泉街という設定で、立場の異なる関係者によるパネルディスカッションを開催。スタッフたちがパネリスト、温泉組合長、温泉組合の若手女将、環境保護活動家、地元の商工会議所の理事、地熱発電の技術者に扮して熱演。参加者から笑いが起きることもありましたが、意見をまとめることの難しさが浮き彫りになりました。

源泉や環境への影響を心配する声がある一方で、地域活性化に期待する声も
源泉や環境への影響を心配する声がある一方で、地域活性化に期待する声も
若手経営者は温泉街が盛り上がることを期待しつつ、事故リスクに不安が
若手経営者は温泉街が盛り上がることを期待しつつ、事故リスクに不安が
技術者は海外の実績などを示しつつ安全性を説くのですが、なかなか理解が得られず
技術者は海外の実績などを示しつつ安全性を説くのですが、なかなか理解が得られず

15:15 講義「エネルギーを巡る環境と世界」 電力の安定供給とカーボンニュートラルを両立するために必要なことは?

この流れのまま、日本と世界のエネルギーの現状について講義を受けます。気候変動への対応やカーボンニュートラルをキーワードに、現在進められているさまざまな取り組みについて学びました。最後に「関心を持って、正しく理解するリテラシーを身につけてほしい。そして、自分事と捉えて、できることから始めること、続けることが大切」と締めくくりました。炭素燃料から水素燃料に転換するための技術開発、エネルギーとSDGsとの関わりなど、健全で持続可能な環境を実現するために何が必要なのか、参加者一人ひとりが考えるきっかけになったようです。

講師を務とめたシゲさんは、学生たちへ「自分ごととして捉えて行動してほしい」とメッセージ
講師を務めたシゲさんは、学生たちへ「自分ごととして捉えて行動してほしい」とメッセージ

16:15 ドクターのCCS実験 今度の実験ではCO2の回収・貯留の仕組みを美味しく学習

再びドクターと助手のセブンが登場。発電の過程で発生したCO2を回収・貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)の仕組みを実験で学びます。この実験の前、なぜかひとりずつにスティック状のチョコレートのお菓子が配られたのですが……。

白く濁っている方はCO2が溶け込んだ液体
白く濁っている方はCO2が溶け込んだ液体
チョコレートはCO2貯留の仕組みを理解するためのものでした(最後に美味しくいただきました)
チョコレートはCO2貯留の仕組みを理解するためのものでした(最後に美味しくいただきました)

16:40 グループワーク・一日の振り返り 密度の濃い1日を振り返って、明日への意欲が増した参加者たち

盛りだくさんの1日目も、ようやく終盤です。今日一日学んだことを振り返り、「今日感じたこと」「知ったこと」「意外だったこと」「もっと知りたいこと」を一人ひとりが考え、グループでディスカッションしました。

まずは自分でじっくり考えてまずは自分でじっくり考えてまずは自分でじっくり考えて
まずは自分でじっくり考えて
違う意見を知ることで学びを深めあいます違う意見を知ることで学びを深めあいます
違う意見を知ることで学びを深め合います

19:00 ひとり一言タイム もうすっかり仲間!ワイワイと語り合う夜の時間

夕食を済ませて、長かった一日がようやく終わろうとしています。この日ですっかり打ち解けた参加者たちですが、スタッフを含む全員が改めて一言ずつ自己紹介。その後の自由交流会も話が弾み、賑やかな夜が更けていきました。

全員で大きな輪になって自己紹介。時折大きな笑い声が湧き上がります全員で大きな輪になって自己紹介。時折大きな笑い声が湧き上がります全員で大きな輪になって自己紹介。時折大きな笑い声が湧き上がります全員で大きな輪になって自己紹介。時折大きな笑い声が湧き上がります全員で大きな輪になって自己紹介。時折大きな笑い声が湧き上がります
全員で大きな輪になって自己紹介。時折大きな笑い声が湧き上がります
エネルギーやエコツーリズム、科学技術コミュニケーションの専門家から直接学べるチャンスエネルギーやエコツーリズム、科学技術コミュニケーションの専門家から直接学べるチャンス
エネルギーやエコツーリズム、科学技術コミュニケーションの専門家から直接学べるチャンス

1日目を振り返って

  • 「実際にエネルギー大臣になりきって考えることで、リスク管理をより自分事として考えられた」
  • 「まだ出会って間もないメンバーとのグループだったが、ゲームを通じて仲良くなることができた」
  • 「地熱開発パネルディスカッションでは、スタッフの方々の熱演により実際の開発に携わる人々の情に触れられたように感じました」
  • 「ドクターの軽快なトークが楽しかったです」
  • 「講義で火力発電所の見学やディスカッションに必要不可欠な知識をここで習得できました」
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