ゆかりんによる最後の講義「科学技術コミュニケーション概論」では、環境問題や私たちの暮らし、これからの私たちと、科学技術コミュニケーションの関係やあり方を考えました。日本は70年代の公害問題を経験し、解決に向けて努力を重ねました。そして90年代には国境を超える課題として環境問題が世界的なテーマとなりました。当時メディアにいた、ゆかりんは環境問題に取り組むためには多くの人が科学を知って発信することの大切さを感じたといいます。
なぜ科学技術コミュニケーションは必要なのでしょうか。科学技術は、社会のあり方や個人の生き方、未来をも左右します。そのため「対話による科学技術政策への市民参加」が重要とされます。科学技術は私たちの生活に密接な関係にあり、そのため問題意識をもち続けて何かあったときに疑問をもてるリテラシーが必要です。それは正しく教える、教わるだけではなく、自分で考え、対話することがベースだと、ゆかりんは話しました。また同時に、科学者自身が社会リテラシーを高めることが対話では必要とされます。
現在、多くの人が不安をもつ健康問題や災害などは、科学に問うことはできますが、社会や政治がどう対処し解決すべきかまでは科学だけでは判断できないケースが数多くあります。こうした「トランス・サイエンス」の事例では、社会と科学の間にあるさまざまな難しい事象を捉えて、科学の可能性と限界、不確実性と向き合うためのコミュニケーションが必要となり、また自分自身で考えることが大切です。そのため、科学技術と社会の望ましい関係を考え、科学技術の楽しさを市民と分かち合う、そうした場づくりもさまざまに模索されています。今後はさらに対話や交流を通じて、未来や新しい価値へ向かうことが望まれます。
最終日も参加した学生3名から感想を聞きました!
「20年後には児童虐待の報告相談件数を半分にしたい」はなちゃん
小さいころは恐竜博士や宇宙飛行士を夢見ていましたが、高校生のころに児童虐待に関心をもち、法学部に入りました。科学分野への夢も捨てきれず、高エネルギー加速器研究機構(KEK)で素粒子物理学のキャンプに参加したこともあるので、今回、エネルギーとエコロジーについて考える場に参加でき良い経験になりました。昨日の三渓園での寸劇が面白くて、ドクターをはじめスタッフのみなさんが、私たちが親しみやすいプログラムをたくさん用意してくれたのだと感じました。将来は、自分の意見を恐れずに言う人になり、20年後には児童虐待の報告相談件数を半分にしたいです。
「教育の現場をもっと活発なものにしたい」なかじまさん
小学生のころからマンションの間取り図が好きで、そこから建築の道に進もうと思いました。今回のツアーも火力発電所などの設計に興味があって参加しましたが、これまで受動的な教育を受けてきて、ツアーでこんなに積極的に発言できたことが印象に残りました。またダジックアースで世界のCO2濃度などを見られたことにも驚きました。将来は、建築士になりたいと考えていますが、設計するだけではなく、今、不登校やいじめを受けた子供たちの家庭教師もしているので、大学の教授になって教育の現場をもっと活発なものにしたいと感じました。
「当事者意識、環境への配慮、利他の心を大切に」ひょうさん
小さいころから機械系、特に飛行機が好きでパイロットを目指していました。また高校のときに企業に興味をもち、大学では経営系の学部に進学。さまざまな働く現場を見て、話すことは非常に重要なことだと思い、このツアーにも参加しました。「エネルギー大臣になろう!」では当事者意識をもって物事を見ることができ、自分が作った経営のゲームにはストーリー性が足りないと気付きました。航空業界に就職するので、その会社の時価総額を1位にしたいと思っているのですが、そのためには環境への配慮や利他の心も大事だと感じました。