大学生向け 火力編@磯子ツアー レポート

エコ×エネ体験ツアー 火力編@磯子学生ツアー 2022年ツアーレポート

カーボンニュートラルの目標である2050年には、今SDGsを学ぶ学生の多くが40代を迎え、今後も一層、SDGsの取り組みに対する注目度は高まると考えられています。J-POWER(電源開発)主催「エコ×エネ体験ツアー火力学生編@オンライン」は、エネルギーや環境問題をはじめとした社会課題、多様性と共感、主張と合意等を学び合うプログラム。例年、火力発電所見学を含めて2泊3日の合宿ツアーを10年余り続けてきましたが、昨年に続きオンラインでの開催となりました。続くコロナ禍で密に学び合う機会が減っている学生たちが、環境やエネルギーに対するそれぞれの思いを抱えて集いました。全国約100か所に発電所を保有するJ-POWERのカーボンニュートラルに向けた取組みをはじめとしたプログラムや、SDGsについて学びを深めた3日間の様子を振り返ります。

<ツアー概要>

  • 日程:2022年2月24日(木)- 2月26日(土)
  • 参加者数:学生5人
  • 場所:オンラインにて開催

<ツアーの目的>

  • エネルギー・環境問題の今と未来に向き合おう
  • 多様性と共感、主張と合意を体験しよう
  • 知る・聞く、話すー学び合う楽しさを感じよう

<全参加学生のニックネーム@学科(学部)>

  • ジュリア@グローバル・コミュニケーション学科
  • みかん@経営学科
  • ゆうき@国際関係学部
  • たかひろ@国際資源学部
  • たけ@生命科
違う大学で、異なる分野を学ぶ学生たちが集まりました
違う大学で、異なる分野を学ぶ学生たちが集まりました

<スケジュール概要>

1日目:
  • ワークショップ「エネルギー大臣になろう!」
  • 「石炭を知る」科学的側面、社会的側面 ※発電実験含む
2日目:
  • 磯子火力発電所ガイド紹介「潜入!ISOGOスコープ」360度映像による発電所体験、「石炭を知る」 技術的側面(発電の現場)
  • エネルギー最新事情「カーボンニュートラルに向けたJ-POWERの取組み」
  • パネルディスカッション「地熱発電所立地に関する模擬討論会」
3日目:
  • 講義「科学技術コミュニケーション概論」
  • グループセッション「自分と社会の課題を見つけよう」行動化に向けての話し合い
  • まとめ「わたしたちの船出」
1日目 10:00

オリエンテーション・アイスブレイク

「エコ×エネ体験プロジェクト」を支える協働パートナー「サイエンスカクテルプロジェクト」は、科学と社会を結ぶコンテンツを企画開発・運営している団体です。同団体代表の古田ゆかり氏(ゆかりん)は長年、本プロジェクトの企画運営に携わり、この3日間の進行役も務めます。なお同氏は、北海道大学高等教育推進機構オープンエデュケーションセンター科学技術コミュニケーション教育研究部門(CoSTEP)特任准教授、文部科学省中央教育審議会初等中等教育課程高校理科専門部会委員等も歴任しています。挨拶と自己紹介の後もまだ少し緊張気味の学生たちに「3日間の中で語られる課題に正解はありません。皆さんが問いを持ち帰ることが大切です」とゆかりんが伝え、3日間のプログラムがスタートしました。

「ゆかりん」ことサイエンスカクテルの古田ゆかり氏が進行役を務めます
1日目 10:50

シミュレーションゲーム「エネルギー大臣になろう!」でエネルギー問題を知る

「エネルギー大臣になろう!」は、政策として電気の安定供給、経済性、環境負荷を考えながら勝敗を争うシミュレーションゲームです。火力や水力、太陽光等さまざまな発電所を建設して得点を競います。参加学生の2チームが自ら命名した仮想国「トマト国」と「ユタ国」は偶然にも同じ条件の国タイプとなったため、発電所の構成やランダムに発生するイベント(戦争、経済危機、地震等)に勝敗の分かれ目があると予想されました。

自分たちで決めた優先政策に合わせて、メンバーと議論を重ねて発電所を建設していきます
偶然にも同じ国タイプとなった2チームは接戦になりました

各チームは発電所の種類によって電気料金等の数値がどのように変化するかを試行錯誤していきました。結果は「トマト国」が勝利しましたが、学生からは「環境を優先すると稼働率や料金のバランスを取ることが難しい」、「この電気料金では、実際には国民の合意は得られないのではないか」等、現実社会に結び付くコメントがありました。

1日目 15:30

「石炭」を多面的に捉え、発電実験では技術を知る

J-POWERシゲさんによる「石炭を知る」の講義では、気候変動問題をはじめ、エネルギーとSDGsの諸問題の関係にも触れました。2050年カーボンニュートラルの実現に向け、2021年のCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)の論点のひとつである「石炭火力の全廃」は大きな課題となっています。日本の場合、およそ産業革命前のCO2排出水準まで低下しなければ、カーボンニュートラルを実現することは難しいといいます。経済や生活水準を維持しつつ、いかにして脱炭素化との両立を実現していくかが課題であるなどの話がありました。

2050年のカーボンニュートラルでは産業革命前と同水準のCO2排出が求められます

続いてドクターこと髙倉弘二氏の発電実験です。ドクターは九州工業大学大学院生命体工学研究科生命体工学専攻博士(工学)で、廃棄物管理改善や有機廃棄物リサイクルを専門としています。また元J-POWERグループの社員であり、現在は高倉環境研究所の代表として活動中です。

まず、ドクターと助手のやまゆきが火力発電の仕組みを実験しました。続いて発電で発生したCO2を回収して貯留するCCS(Carbon dioxide Capture and Storage)という技術が、どのようにCO2を吸収し、安全な地下に安定的に貯留できるかを解説しました。CCSは石油やガスの可採量を上げるため、地層中に液体CO2を注入する、以前からある技術の応用で実証もされています。

ドクターと助手のやまゆきが火力発電の仕組みを実験!
二酸化炭素を回収して貯留する技術を実験でわかりやすく伝えます
エコ×エネ体験プロジェクトお馴染み、ドクターの「フレミングの法則ラップ」

初日の振り返りでは、ゆかりんから気候変動問題における先進国と途上国の格差や公平性等の問題提起がなされ、ドクターからはCO2をエネルギーだけの問題ではなく「食」にまで広げた視点が紹介されました。学生からは「ネガティブなものばかりではない」「ビジネスチャンスかもしれない」「自分にできることは何か」といった声が聞こえました。

ドクターからはCO2をエネルギーだけの問題ではなく「食」にまで広げた視点が紹介されました
SDGsへの関心も高い学生たち
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