エコ×エネ体験ツアー 火力編@磯子大学生ツアー 2020年ツアーレポート
火力編@磯子大学生ツアー2日目
磯子火力発電所に出発!
おいしいと評判の朝ごはんをしっかり食べて、作業服を着て出発!目指す磯子火力発電所はバスに乗るとあっという間で、市街地から近い場所に位置していることがわかります。
オリエンテーション
50年以上前、横浜の大都市で石炭を燃焼することを地元の人たちに理解いただけるように対策して運営してきた磯子火力発電所。「見学を通じて、未来のエネルギーについて考え得るきっかけになれば」と所長さんやスタッフの方からのご挨拶を受け、いよいよ本ツアーの目玉「ISOGOスコープ」のスタートです。
磯子火力発電所は1960年代に、国の石炭政策に沿って建設され、大都市部に位置する発電所として初めて公害防止協定を横浜市と締結。横浜市の「よこはま21世紀プラン」に基づく環境改善計画に対応しいちはやく排煙脱硫装置を設置するなど、環境保全対策に力をいれつつ電力の安定供給を支えてきました。
旧1・2号機は国内炭を使って計53万kWを発電。2000年代に運転を開始した新1・2号機は、海外炭を使って従来の約2倍の計120万kWの発電を担っている、環境負荷軽減とエネルギー効率向上を世界最高水準で両立したコンパクトな都市型石炭火力発電所です。
<環境のための対策>
・大気汚染防止対策
・水質・温排水対策
・粉じん飛散対策
・騒音・振動対策
・石炭灰の有効利用
・景観配慮
・緑化
グループ&全体 ダイアログ
お昼の後は、ISOGOスコープで感じたこと、1日半のツアーを終えて感じていること、エネルギーについて自分ごととして感じることなどを話しあいました。
お昼の後は、ISOGOスコープで感じたこと、1日半のツアーを終えて感じていること、エネルギーについて自分ごととして感じることなどを話しあいました。
- 「石炭=煙を吐き出して空気を汚すイメージだった。思ったよりもずっとクリーンだった」
- 「石炭を細かく砕いてから燃やすということを初めて知ったし、有害物資を出さないためのいくつものプロセスがあってびっくりした」
- 「発電だけではなく、景観や周辺地域への影響など、いろいろ考えられているのだなと感じた」
- 「石炭のネガティブイメージが変わった。この水準の技術を世界に輸出することには意味があると思う」
- 「火力発電には悪いイメージしかなかったけれど、実際に現場に行き、努力とか歴史の話をきいて視点が変わった」
- 「例え環境の負荷が抑えられていたとしても、化石燃料が無限にあるわけではない。これからどうしていきたいのかを大きな展望を持って考えることが必要だと思った」
- 「見学だけでは自分ごとにまではまだなれていないと感じている。いろいろな立場や見方があるし、エネルギーという大きな話をどう考えていけばいいのか難しい」
寸劇「横浜方式」から学び合おう
磯子火力発電所から戻った後は、社会はどうなっているのか、その中で自分はどうすればよいのだろうか。自分ごととして行動していくための準備を加速していきます。
そのきっかけとなる学びのプログラムは寸劇「横浜方式」物語。磯子火力発電所の誕生の背景にはどんな物語があったのでしょうか。寸劇を通して探っていきます。
高度成長期を迎えた昭和30-40年代。中東から安価な石油を輸入し景気が活性化する中、国内の石炭の需要が落ち込み、産炭地が構造的不況に陥りました。工業化が進む中、各地では公害問題が発生していました。横浜市磯子区に石炭火力発電所が建設されることに対し、住民の反対運動が起きました。医師会が中心に「磯子住民運動連絡会議」が形成され、横浜市に対して陳情書が提出されました。これに対し、当時の飛鳥田一雄市長のリーダーシップのもと、全国初の企業と地方自治体との間に「公害防止協定」が結ばれたのです。この方法はのちに「横浜方式」と呼ばれ、全国の地方自治体の公害防止行政のお手本になりました。
「SDGs時代のエネルギーミックスを考える」
ここでキャップから、これまでの学びの振り返りと、これからのエネルギーミックスを考える上での視点の提示がありました。
「ここまでの時間で、エネルギーについて多くのことを学んできました。地球環境問題の顕在化が進み、低炭素化や脱炭素化を進めようとパリ協定が発効しました。2018年にはIPCC (国連気候変動に関する政府間パネル)は1.5℃特別報告書を発表。さらに野心的な取り組みが必要だと言われています。資源小国の日本が、どのようにエネルギー政策を考えていけばいいのか。供給側の対策だけではなく、消費側からも考えていく必要があると言えるでしょう。環境・社会・ガバナンスの視点を大切にする「ESG投資」では、石炭関連事業には新たに投資しない、あるいは投資を引き揚げる動きがありますが、例えば途上国などの旺盛なエネルギー需要をエネルギー密度の低い再エネだけで賄うことは難しいとも言えます。技術を磨くことで、石炭を上手に使う幅広い選択肢を残すことも大事ではないかと思うのです。是非、自分自身で考えていっていただけたらと思います」
科学技術コミュニケーション概論
サイエンスカクテルのゆかりんから、科学技術コミュニケーションについてのレクチャーがありました。
「科学技術コミュニケーションについての捉え方はさまざまですが『科学に関わる情報を科学者と科学者でない人たちがやりとりすること』というものが好ましいと考えています。一般に科学には解がひとつで揺るぎない確実性があるということが期待されていますが、それはほんの一面。科学は、未知を相手に探求する『営み』であると言えます。今後、トランスサイエンス(科学に問うことはできるが、科学が答えることはできない問題群)が益々増えてくると思います。科学者たちは、科学が世の中に与える影響に意識を向け、高度な倫理的基準を自らに課すことも必要です。これからは一般的な人がリテラシーを持ち判断に使えるようになることも必要と言えるでしょう。皆さんは、どう考えますか…?」
4次元デジタル宇宙ビューアーMitaka上映会
続いては星と宇宙についての映像上映。体育館に集まり寝転っていると、まるでプラネタリウムを訪れたような気分になります。何十億光年という壮大な時間の宇宙の物語に触れると、人間の生きる時間がちっぽけに感じられそう…。
明日にむけて -自分の行動を考える準備
ここからは、学んだことを受けてこれから自分がどう行動していきたいか、言語化していく時間です。
「あなたは社会にどんな問題が潜んでいると思いますか?」
「あなたの取り組みたいテーマを挙げてみましょう」
気になるテーマを紙に書いて部屋を歩き回り、自分と関心が近い仲間をみつけてグループを形成します。
- 「自分はエネルギーの技術的なところに関心があったけれど、政策とか社会のしくみにも目を向けていくのも面白いと考え始めました」
- 「情報をどう伝えるかが大事だと思ったので、情報・コミュニケーションについて取り組みたい」
- 「国や世代の間の公平さが気になるけれど、テーマが大きいので、どうやって自分ごとに落とし込めばいいだろう」
- 「無関心な人に興味を持ってもらうための伝え方や教育プログラムについて考えたい」
- 「まちづくりとエネルギーの関係について考えていきたいです」