大学生向け 火力編@磯子ツアー レポート

エコ×エネ体験ツアー 火力編@磯子大学生ツアー プログラムアドバイザー

エコ×エネ体験ツアー火力編(磯子 2020)レビュー・レポート

エコ×エネ体験ツアー火力編(磯子2020)にプログラム・アドバイザーとして参加しました。文理横断的に学ぶ国際資源学研究科/学部で教鞭をとる身としては、「エネルギーと環境の共生」の学びを目的とする内容は魅力的で、以前より是非参加してみたいプログラムでした。また、2年前に参加した学生が繋いでくれたことで「エネルギー大臣」についてのみ、既に弊学でも実施していただいており、電力構成の難しさをバランスよく学べる教材となっていることに感銘を受けておりました。そのような理由から、今回は正に念願叶った参加となりました。

さて、言うまでもなくこのプログラムの参加者達は、多かれ少なかれエネルギーと環境問題に関心を持っている学生達です。普段見ることが出来ない石炭火力発電所の中に入る「潜入!ISOGOスコープ」に誘き寄せられた(であろう)学生達の背景は多種多様で、その関心もエネルギーに重点があれば、環境により強い関心を持っている学生もいる、また合意形成に関心を持つ学生もいるなど、エネルギーと環境を取り巻く今日の社会を反映している面々でした。それらの学生達が(今年から取り入れられた)寸劇やパネルディスカッションなどの仕掛けを通して、エネルギー問題を切り口として最終的に自分なりの「社会課題」を発見していくプログラムは全体としてよく練り上げらえていたものでした。仮に学生から大学で同様の講義を求められても、難しいと答えざるを得ないものであり、熱意を持った多くのスタッフがいてこそ成り立った内容だったと言えます。

そもそも、電力は複雑なネットワークにより成り立っており、今日の社会で利用しない人は皆無のエネルギーです。裏を返せば、我々はちょっと想像力を膨らませれば電気(電力)を通じて人と人の繋がりを再確認することも可能でしょう。その意味では、排外主義や格差など社会的分断が問われている今日のような社会状況だからこそ、本プログラムの社会的意義はますます深まるものであり、エネルギーだけではなく社会のあり方に関心を持つ学生達に広く参加していただきたいというのが、三日間のプログラムに参加し、そこで自分なりの課題を見つけて行った学生達を見ての素直な感想です。最後に、今年は新型コロナ・ウィルス対策にも気を使いながら進めた気苦労も重なり運営は本当に大変だったと思います。これだけのプログラムを単なる前年の焼き直しにせずに絶えず新しいプログラムをつくって学生を受け入れるスタッフの皆さん、本当にお疲れ様でした。

秋田大学大学院国際資源学研究科 講師
稲垣文昭

プロフィール:稲垣文昭(いながきふみあき)
稲垣文昭 秋田大学大学院国際資源学研究科・講師
慶應義塾大学総合政策学部卒業、筑波大学大学院博士一貫課程国際政治経済学研究科退学、2010年に慶應義塾大学にて博士号(政策・メディア)取得。慶應義塾大学SFC研究所・上席所員、外務省専門分析員、慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科特任准教授などを経て、現職。中央アジアの水資源紛争研究を契機に、エネルギー・資源問題の研究に取り組む。現在は、ユーラシアのエネルギー、資源問題について国際政治経済学や地政学の視点から研究するとともに、大学で資源政策論などを担当。おもな著作に『資源地政学―グローバル・エネルギー競争と戦略的パートナーシップ』法律文化社、2020年(共著)など。