地域活性が切り口の新しい旅を
永岡 里菜

Venus Talk

株式会社おてつたび代表取締役CEO 永岡 里菜

「お手伝い」×「旅」で「おてつたび」。
おてつびと(参加者)は旅先で報酬を得ながら働き、空き時間に旅を楽しむことができる。
一方、受け入れ側事業者は、旅を切り口にすることで繁忙期に人材を集められる。
このユニークな仕組みをつくった女性とは?

取材・文/ひだい ますみ
写真/竹見 脩吾



高齢化や人手不足に悩む地域と、働きながら旅を楽しみたい人をつなぐマッチングサービス「おてつたび」。その生みの親が株式会社おてつたび代表取締役CEOの永岡里菜さんだ。

「私の故郷、三重県尾鷲市は漁業や林業が盛んで、景色が美しく、人の心も温かい、魅力あふれる地域です。でも、観光名所がなく、知名度は高くありません。実際に来てもらえたら、魅力を理解してもらえるはずで、そういう場所が全国にはたくさんあります」

「どこ、そこ?」と言われる地域に足を運んでもらうにはどうすればいいのか。日本各地の訪問先で仕事を手伝った体験から、永岡さんは「お手伝い」と「旅」の掛け合わせを考案した。

「参加者は、お手伝いの報酬が得られますから、リーズナブルな旅ができます。また、地域の人と深く関わるため、新しい体験や出会い、その後の交流などで世界が広がります。実際に、『人生が変わった』といううれしい声もあります」地域に移住を決めた人、縁あって嫁いだ人……、思わぬ良縁を紡ぐ事例も増えている。

農業や観光業など繁忙期のある事業と相性のよいおてつたび。受け入れ先からも「人手不足の解消になった」、「仕事を考え直す刺激を受けた」などと好評だ。

「おてつたびが、地域の高齢化や過疎化対策の一助になることを願っています。100年続く、地域のインフラになりたいのです」

次世代に「ふるさと」を残すべく、永岡さんの奮闘が続いている。

開業時は、永岡さん自らおてつたびに同行。群馬県吾妻郡長野原町 川原湯温泉 山木館での一枚。
オフィスで。「仕事のためには、真摯に人間関係をつくることが大切。スタッフはもちろん、各地の事業者、自治体、農協、大学などとの連携の大切さを実感しています」と永岡さん。
パソコンに貼ったリュックのロゴマークには、多くの人に、居住地と出身地以外に好きな地域をつくってほしいという思いが込められている。
山形県西村山郡西川町「山菜料理出羽屋」にて。おてつたびは、季節によって人手が必要となる農業や観光業との相性がよい。

PROFILE

株式会社おてつたび代表取締役CEO 永岡 里菜

ながおか・りな
1990年、三重県尾鷲市生まれ。株式会社おてつたび代表取締役CEO。千葉大学卒業後、PR・プロモーションイベント企画制作会社に勤務。農林水産省との和食推進事業の立ち上げを経て独立。「いい人、いい物、良い地域がしっかり評価される世界をつくりたい」と思い、2018年7月におてつたびを創業。