ハロウィーンのかぼちゃランタン(長野県諏訪郡原村)

「音のソノリティ」を詠む

表情の内にほほえみ立つ炎あなたはかつて私を産んだ

歌人 小島 なお

ゾッゾッゾッゾッ。オレンジ色のかぼちゃの果肉をスプーンでこそげ取る硬い音が、秋を迎えたかぼちゃ畑に聞こえてくる。

長野県諏訪郡原村、八ヶ岳の麓にあるおよそ7,000m2の畑。八ヶ岳中央農業実践大学校では、毎年ハロウィーン飾りに使うオレンジ色のかぼちゃを育てている。約1万個を収穫し、ホテルやテーマパークなどに出荷する。ハロウィーンの起源は、紀元前の古代ケルト人による悪霊を追い払うための祭事といわれている。当時は蕪(かぶ)でジャック・オ・ランタン(顔のランタン)をつくっていたが、米国に広まった際にかぼちゃに変わったという説も。

悪霊から身を守るため、祖先の霊を迎えるため。昔も今も、私たちは死者への畏(おそ)れと敬意をかぼちゃに灯してきた。見えない者たちが、ひととき姿を見せてくれる秋は幻想の季節だ。

※「音のソノリティ」第1053回放映「ハロウィーンのかぼちゃランタン」を観て詠んでいただいたものです。J-POWERグループは長野県で早木戸発電所を運営しています。

顔の形にかぼちゃをくり抜いた「ジャック・オ・ランタン」は、アイルランドやスコットランドの民間伝承に登場する「ランタン持ちの男、ジャック」に由来すると言われている。(写真:Alamy/アフロ)

PROFILE

こじま なお

東京都出身。2004年、角川短歌賞受賞。2007年、第一歌集『乱反射』により現代短歌新人賞、駿河梅花文学賞受賞。2020年4月、第三歌集『展開図』刊行。居合道三段。

音のソノリティ 世界でたった一つの音

J-POWER は、首都圏などで放送中のミニ枠テレビ番組「音のソノリティ~世界でたった一つの音~」を提供しています。「ソノリティ」とは、フランス語の音楽用語で「鳴り響き」の意味。日本の自然風景から、その場所でしか聞くことのできない音を紹介しています。

日本テレビ系列 毎週日曜日 20:54 ~ など /BS日テレ 毎週水曜日 22:27 ~ (再放送)