インドネシアで水力開発の礎をつくる
インドネシア共和国
PT MULYA ENERGI LESTARI
Global J-POWER ―世界とともに―
MEL社の開発力と情熱が最大の魅力
2024年11月、J-POWERはインドネシアの水力発電事業会社であるPT Mulya Energi Lestari社(以下、MEL社)による第三者割当増資を引き受け、J-POWERとして同国初の水力発電事業に参画した。検討段階からこのプロジェクトに関わり、現在はMEL社のディレクター(取締役)を務める小林憂三さん(J-POWERから出向)にお話を伺った。
「J-POWERは、2050年までにCO2排出実質ゼロを目指す『J-POWER BLUE MISSION 2050』に挑戦中で、各国で再生可能エネルギー(以下、再エネ)の新規開発に取り組んでいます。MEL社への出資を決めた最大の理由は、MEL社が持つ『開発力』です。我々外国企業にとって難しい用地取得や許認可手続きに精通していることに加え、MEL社自身がグリーンフィールド(未開発地点)から水力発電所を建設し、安定的な商業運転に至らせた実績が、出資への強いインセンティブとなりました。さらに、MEL社の経営陣の水力開発に対する情熱と誠実さ、地域との共生を重視する姿勢はJ-POWERの企業理念と通底しています」
MEL社は現在、従業員数40名強の企業で、「同国内で著名なプレーヤーというわけではない」と小林さんは語る。水力開発に長年の経験を持つ社長のインドラトトさんは、インドネシア国営電力会社PLN(PT Perusahaan Listrik Negara)の出身で、その経験を活かし、同国の再エネ産業のリーダーとなることを目指している。J-POWERは、MEL社を同国での再エネ開発を加速するためのプラットフォームとする狙いだ。
電力事情と水力発電のポテンシャル
現在、インドネシアの約84%が化石燃料由来の電力だが、2060年までのカーボンニュートラル達成を目標に、同国は再エネ電源の導入を加速している。最新の電力供給計画では、今後10年間で新増設の発電設備容量の65〜75%を再エネで賄う目標を掲げており、「水力発電は大きなポテンシャルを持っている」と小林さんは語る。MEL社の取締役として、経営に関与するだけではなく、J-POWERが長年日本で培ってきた水力発電の知見と技術力を活用して同社を支援することも小林さんの重要な役割だ。「MEL社の事業をいかに早く、かつ安定的に成長させていくか」を考えながら、スタッフや設備の安全には最大の配慮を怠らない。
同社は、地域との共生を大切にし、地域のニーズを踏まえたCSR(企業の社会的責任)活動にも積極的に取り組んでいる。道路補修などのインフラ整備や教会への寄付のほか、着工時に地元行政関係者や村民を招いてのセレモニー開催など、信頼関係を築きながら地域発展への貢献に努めている。
小林さんはこうした活動を通じ、同国での仕事に責任とやりがいを感じている。
「進行中の6つのプロジェクトを確実に商業運転へとつなげ、さらに新たな案件も積み重ねていきたいと考えています。J-POWERの技術力とMEL社の開発力を活かし、この国の再エネ開発と持続可能な電力供給に貢献していきたいと思います」

