「決して諦めない」が信条のレーシング界の新星
池島 実紅

Rising Stars

時速約240㎞のスピードでコーナリング、そのスピードとスリルが魅力。
異色の経歴の女性レーシングドライバー池島実紅さんの生き方に迫る。

取材・文/ひだい ますみ 写真/竹見 脩吾



女性レーシングドライバーとして活躍中の池島実紅さんだが、その経歴は異色といっていい。

「レースに出合ったのは、父の影響で10歳の時、キッズカートに乗ったのが、きっかけです」

その後、15歳の時、久しぶりにレース雑誌を見て、池島さんの魂に再び火がついた。

「レーシングドライバーって、やっぱりかっこいいなっていう気持ちがこみ上げました。それで、15歳で親元を離れて、17歳で今のチームに飛び込みました」

アルバイトから始めて、自分から積極的にできることを見つけ、マネージャー業務やエンジニアの手伝いなど、チームの仕事には何でも関わっていった。

様々な知識や技術を吸収していくうちに、写真撮影の技術も独学で習得。チームフォトグラファーとしてレースの撮影を任されるようになった。現在、池島さんは、ドライバーと広報スタッフとして、表舞台と裏方の両方からチームを支えている。

「周囲から『二刀流は大変そう』と言われますが、そう思ったことはありません。自分はこのチームで頑張って働きながらドライバーを目指すしかないと覚悟していましたから」

ドライバーになるための道は大変厳しい。レーシングカートから始め、フォーミュラにステップアップ。自動車メーカーの育成スクールに入り、奨学金を得て、プロドライバーの選考会を突破するのが王道と言われている。当然、幼い頃から親や周囲による資金面などのサポートも必要になる。恵まれた環境と才能を持った一握りの者だけがたどり着ける狭き門だ。

そんな中、池島さんは、努力によって道なき道を自ら切り拓いてきた。ずっと心にあるのは「絶対に諦めない」という信念。そして、チームへの感謝だ。

「チームでの仕事の経験が、レースにも役に立っています。長く働いてきてメカニックの現場を知っているからこそ、エンジニアと専門的なやり取りができますし、チームのために広報の視点を活かした活動もできます。チームのみんなとの深いコミュニケーションが、ドライバーとしての私の強みです」

これまで、FIA-F4(エフアイエーエフフォー)やVITA(ビータ)などのエントリークラスのレースに参戦し、着実に実績を築いてきた池島さん。これからの目標や夢は、すでに胸のうちに定まっている。

「表彰台に上がってチームのみんなと一緒に喜び合うために、頑張っていきます。レースは、スピード感やエンジンの爆音、タイヤのゴムの溶ける匂いなど、現場でしか感じることのできない魅力がたっぷりです。ぜひ会場に足を運んで欲しいと思います」

今日の努力が明日の自分をつくると信じる池島さん。カメラとハンドルを握りしめ、毎日を全速力で駆け抜ける新進気鋭の輝ける星から目が離せない。

自らフォトグラファーを志願。ドライバーの視点を武器に、マシンやメカニックの様子を激写。(写真:TGM Grand Prix提供)
「クラッシュすると、レースが終わってしまう恐れがあるし、莫大な費用も掛かるので、それは全力で回避します」と池島さん。(写真:TGM Grand Prix提供)
レーシングスーツは、黒がベース。「何色にも負けない黒色が好きです」と池島さん。(写真:TGM Grand Prix提供)
「実は、怖がりです」。そんな自分自身を研究し、コントロールする方法を得る喜びが、恐怖より勝っているという。(写真:TGM Grand Prix提供)

PROFILE

池島 実紅
レーシングドライバー

いけじま・みく
女性レーシングドライバー(TGM Grand Prix所属)。1997年、埼玉県生まれ。2014年富士チャンピオンシリーズ優勝、岡山国際シリーズ優勝、2018年FIA-F4 JAPANESE CHAMPIONSHIP Rd.3・4 FUJIインディペンデントカップ2戦連続優勝など活躍。2024年、ロードスターカップ1.5オープンクラス、GR86/BRZ Cup、KYOJO CUPに参戦。2025年、GR86/BRZ Cup Rd.2モビリティリゾートもてぎ優勝、ロードスターカップ1.5オープンクラス Rd.3富士スピードウェイ優勝、KYOJO CUP参戦。TGM Grand Prixは、モータースポーツを通じてより多くの人に「情熱」を届け、新しい価値や価値観を創造していくために結成されたレーシングチーム。