通砂バイパストンネルでダムと河川を土砂災害から守る。

POWER PEOPLE

幌加(ほろか)調整池(北海道上士幌町)

2016年8月の北海道豪雨は十勝川流域にも甚大な被害をもたらした。幌加発電所の水源である幌加調整池も、上流から押し寄せた土砂で満杯となり調整池の機能が停止。堆砂を重機で掘り起こしてはトラックで運び出し終えるまでの1年8カ月の間、発電できない状態に陥った。

この災害を機に、経年で調整池にたまった土砂を浚渫(しゅんせつ)する従来の対策から方針転換。河川増水時に調整池に流れ込む土砂が調整池内に堆積しないように、ダムを迂回させて下流へ流すことができる「通砂(つうさ)バイパストンネル」の設置を決めた。近年、持続可能な土砂管理法として注目され、全国61カ所の水力発電設備を持つJ-POWERで初の導入例となる。

「既存の浚渫方式は、工事車両の大量投入や土砂置き場の確保といった難題が伴いました。しかも集中豪雨などで大規模な土砂災害が起きれば、ダムが機能停止して発電能力が失われることも示されました。今回、通砂バイパストンネルを設けることでダム機能の保全が改善され、電力安定供給にも資すると考えています」

22年秋に着手したトンネル設置工事で施工監理にあたる宮田将吾さんは、日増しに完成形に近づく現場に立っては充実感に浸る日々。運用が始まれば災害非常時のほか、調整池への流入が増す融雪期と夏場の出水期に年数回ほど稼働させる計画だ。

「運転開始から60年を経た幌加発電所にとって、発電の命綱とも言える水源をリニューアルし、同時にダム下流域も本来の河川環境に立ち返る契機になればと期待しています」

取材・文/内田 孝 写真/山崎 エリナ

幌加調整池の畔に立つ案内板で、通砂バイパストンネル計画について説明する宮田将吾さん。
水路トンネルの上端(呑口)付近で進む設置工事。完成後には、上流からの土砂を含んだ水がここから流れ込む。
土砂水はトンネル内を流れ下り、下端(吐口)から下流へ戻す仕組み。
幌加調整池は、北海道豪雨時にダム際まで流入土砂で埋まり、取水口を塞いだ。
このプロジェクトで得た経験は、今後の業務の糧としていきたいという。

PROFILE

J-POWER水力発電部
東日本支店
上士幌電力所
宮田 将吾