70年紡いだ水力発電の叡智(えいち)を再エネ活用の新たなステージに。

POWER PEOPLE

足寄発電所・活込ダム(北海道足寄町・本別町)

堤体内部の監査路で漏水などを調べている(※撮影のため、例外的に手袋を外しています)。

水流豊かな十勝川水系にJ-POWERが初めて水力発電所を築いたのは1955年10月。活込(かっこみ)ダム(ダム湖名:足寄(あしょろ)湖)を水源とする足寄発電所は、以来一貫して地域の産業基盤となり、人々の生活を支える電力インフラとしての役割を全うしている。

運転開始から70年を経てもダム本体や発電設備などはほぼ建設時の原型を保つ。経年により時に対応が必要な事象も発生するが、その都度、発電所の機能を損なわぬよう、現場の社員たちによる保守・管理体制が敷かれ、その技術が長く受け継がれてきたのだ。

「既存設備の補修・改修といっても守り一辺倒とは限りません。例えば当発電所では、ここ数年で水車発電機などの主要設備を一括更新するリパワリング工事を行い、最大出力を6%近く増強できました。北国の気候など厳しい制約があっても進化は可能なのだと手応えを感じています」

そう語る土屋宏遠さんは現地に赴任して3年目。土木職として西日本の水力現場を巡り、直近ではインドネシアでの火力発電所建設にも従事。昨今、再生可能エネルギー活用の主軸として存在感を増す水力発電の真価や新たな可能性を、幅広い視点から探りながら、信条の「仕事は楽しくするもの」を実践中だ。

「歴史を重ねた水力発電所は、見方を変えれば施設の減価償却が完了し、メンテナンスコストのみで電力を生産できる得難い資産です。しかも水力を上手に使えば使うほどカーボンニュートラル社会に貢献できる」と熱く語る姿はまさに次代のリーダーだ。

取材・文/内田 孝 写真/斎藤 泉

運転開始から満70年を経た足寄発電所の水源・活込ダム。毎秒最大56m3の水を供給する。
活込ダムの堤頂を歩き計器類をチェック(※撮影のため、例外的に手袋を外しています)。
活込ダムと約6km離れた足寄発電所を結ぶ水圧鉄管が山野を縫うように伸びる。
水圧鉄管の中継地点で送水圧を調整する鉄管弁。巨大さに圧倒される。
上士幌電力所では、十勝川水系にある8つのダム、9つの発電所を保守・管理している。

PROFILE

J-POWER水力発電部
東日本支店
上士幌電力所
土屋 宏遠(こうえん)