脱炭素社会への試金石となる高効率化とCO2回収を極める。

POWER PEOPLE

大崎クールジェン株式会社(広島県大崎上島)

瀬戸内海に浮かぶ大崎上島(おおさきかみじま)では、中国電力株式会社とJ-POWERの共同出資による大崎クールジェン株式会社が運営主体となり、石炭火力発電の高効率化やCO2分離回収技術などの確立と社会実装によるカーボンニュートラル、水素社会実現に向けた挑戦が続いている。

石炭火力の低炭素化を図る決め手として、J-POWERは長く「石炭ガス化」技術に取り組んできた。石炭をガス化して燃焼する発電システム(IGCC)には、発電効率を格段に高めつつ環境負荷を低減する利点がある。加えて、CO2を分離回収することで、CO2排出量を大幅削減する道も拓けるのだ。

「2012年度からの実証試験を通じて、IGCCプラントの発電効率として商用規模で約46%を達成する見込みです。同時にLNG発電に近い環境性能を達成しました。CO2対策についても、回収効率90%の高い技術目標をクリアしました」

そう胸を張る櫨木健太さんがプロジェクトに加わった2019年、実証試験はさらに「燃料電池発電」も組み込む最終段階(CO2分離・回収型IGFC)へと進んでいた。これによりCO2分離回収と酸素吹IGCCおよびIGFCの組み合わせで石炭から水素をつくり、水素発電が行えるシステムであることも示した。

「脱炭素化への挑戦に果てはありません。直近では、酸素吹IGCCの石炭燃料の50%をバイオマス燃料に置き換える試験にも成功。分離回収したCO2の貯蔵や有効利用など、やりがいのある仕事が山積みです」

取材・文/内田 孝 写真/斎藤 泉

石炭ガス化するための設備群。酸素吹IGCCの基幹を担っている。
石炭ガス化ガスの一部はCO2分離回収設備(手前側がCOシフト反応器)に送られる。
CO2分離回収型IGFCにて試験した燃料電池モジュール。CO2分離回収型IGCCによる水素発電試験は世界初という。
CO2分離回収設備(CO2吸収塔)。CO2を取り除き水素濃度を高めガスタービン、燃料電池へ送る。
櫨木さんにとってプロジェクト参画はやりがいを感じるものだ。

PROFILE

大崎クールジェン株式会社 技術部
技術グループ サブマネージャー
櫨木(はぜき) 健太