荘川桜を守る者

地域の宝から多くの人々の宝へ

地域の人々ばかりではなく、いまでは全国から大勢の方々が花見に訪れるため、責任の重さも感じられているのではないでしょうか。

最近では荘川桜の認知度も上がり、ゴールデンウィークには、国道に観光バスが連なるほどの人気観光コースになっています。毎年開花時期の1週間で、5万人近くもの人々が訪れるのです。遠方からも、わざわざこの桜を見るためだけに、この山奥まで来てくださる。地域の方々にしてみれば、当然荘川桜は観光資源であるわけですし、宣伝にも大いに力を入れてくださっています。私たちもご要望にお応えし、保守管理のみならず、荘川桜の観光客用駐車場を増やすなどして、環境整備にもご助力させていただいております。

地域の方々の、荘川桜を盛り上げていきたいという思いを知れば知るほど、少しでも多くの花を咲かせたいという思いが強くなります。

それだけでなく、電源開発(J-POWER)の他の所員からも、まだ元気なのか? 花は咲いているか? と聞かれることが多々あります。咲くか、咲かないか、みんなで心配しながら、心待ちにしているのです。郷土の宝、そして社にとってのシンボルツリーを保守することは、たいへん誇らしいことであると同時に、大いに責任も感じています。

しかし最近は、開花するかしないかで、あまり一喜一憂しないようにしようという気持ちが所員の間で浸透しつつあることも事実です。なぜなら、2本の荘川桜は、もう樹齢450年以上の老木です。その桜に、鞭打つようにして花を咲かせるのは、自然に反することなのではないかとも考えるようになってきたからです。桜というと、みなさんあの美しい花のことを想像しがちなのですが、花のみならず、根も、幹も、枝も、葉も、すべて含めての桜なのですから。

花を咲かせるためだけに、桜全体に無理を強いるようなことは、樹木そのものの寿命を縮めかねません。私たちが生きてお世話できる間はもちろんですが、それ以降も何十年、何百年と元気にこの地で生きてもらうためにも、思いやりのある気持ちで、桜の樹勢を見守ってあげたいと思っています。そしてみなさんにも、桜が咲かない年があっても、自然の老桜とはこのようなものだと認識していただければ幸いです。