原子力防災について
原子力防災について

原子力発電所では、多重防護の考え方を基に設計を行い、たとえ異常が発生したとしても、原子力発電所外に影響を及ぼすようなことがないように何重もの安全対策がとられています。

原子力発電所の防災対策は、このような安全対策とは別の観点に立ち、万が一の予期せぬ事態が生じたとしても、その影響をできるだけ最小限にし、住民の方々の安全を確保するよう講じられます。

原子力防災対策については、従来から災害対策基本法に基づいて、国、地方公共団体等において防災計画を定めるなどの措置が講じられてきました。1997年6月には、災害対策基本法の枠組みの中で、関係者の役割分担の明確化などを内容とする防災基本計画原子力災害対策編が策定されました。

(1) 迅速な初期動作の確保
適切な初期動作を確保するためには,迅速に正確な情報を把握する必要があるため、一定の事故・故障等が生じた場合の通報を原子力事業者に義務付けています。通報を受けた主務大臣は、地方公共団体の要請などに応じて、専門的知識を有する職員の派遣などを行います。また、現地に常駐している原子力防災専門官が原子力施設近傍に設置されている緊急事態応急対策拠点施設(オフサイトセンター)において警戒体制の立上げを行うなど、原子力災害対策のための業務を実施します。さらに事象の推移に応じて、あらかじめ定められた事象等に至った場合には、主務大臣は直ちに内閣総理大臣に報告するとともに、原子力緊急事態宣言を出すように申し出ます。内閣総理大臣は「原子力緊急事態宣言」を行い、自らを本部長とする「原子力災害対策本部」を設置します。また原子力安全委員会は、内閣総理大臣の求めに応じ、技術的事項についての助言を行います。
原子力災害が発生すると、国は現地のオフサイトセンターに「原子力災害現地対策本部」を設置し、地方公共団体や原子力事業者とともに原子力災害合同対策協議会を組織して、情報交換や対策の相互協力などを行います。
(2) 国と地方公共団体との有機的な連携の確保
平常時より原子力防災専門官が現地に駐在し、原子力事業者や地方公共団体と連携した活動を行うとともに、原子力緊急事態が発生した際には、あらかじめ指定されたオフサイトセンターに原子力災害合同対策協議会を組織します。
また、国が定める計画に基づき、国、地方公共団体、原子力事業者等の関係者が共同して実践的な防災訓練が実施されます。
(3) 国の緊急時対応体制の強化
緊急時に国が適切に対応できるよう、原子力災害対策本部長は、関係機関の長や原子力事業者に対し、必要な指示をすることができるほか、必要があると認めるときは、自衛隊の派遣を要請することもできます。
原子力災害対策本部長の主要な権限が委任されている現地対策本部長は、現地における実質的な責任者として関係機関に対する調整や支持を行い、安全規制担当省庁、関係省庁、地方公共団体、原子力事業者、原子力の専門家、その他関係機関と連携を取りつつ、緊急事態応急対策を実施します。
さらに防災基本計画に基づき、文部科学省、経済産業省、指定行政機関、地方公共団体、指定公共機関などはそれぞれの定める防災業務計画や地域防災計画によって、必要な防災対策を講じます。
(4)原子力事業者の責任の明確化
原子力事業者に対し、原子力事業者防災業務計画の作成を義務付けるとともに、当該業務を行うために必要な要員及び資機材を備えた原子力防災組織の設置や、原子力事業所ごとに原子力防災管理者などの選任、一定の事象が発生した場合の関係者への通報、それを確実に行うための放射線測定設備の設置やその数値の記録・公表を義務付けています。
さらに、原子力災害発生時の「応急措置」、「応急措置の報告」などの対応が義務付けられています。